構造改革の勧めー土地登記制度についてー

昨日の日記に、ドイツ式の不動産登記制度について

やればまっとうな「構造改革」なんだけどね。

と書いたけれど、民法の契約概念などに関わる大事な話を一行で片付けてしまっていて、このままでは某先生に「ダメな議論」と言われても仕方がないので、ここで少し背景説明だけでもしておく。

まず、公図未改訂問題で私の念頭にあったのは兵庫県南部地震による被害集中地区である長田区である。
当時、都市計画の恩恵が及ばなかった地区に被害が集中した事が話題となり、都市計画学会の重鎮が「やり残した部分がみな壊滅した」とつぶやいたとの噂もある。
都市計画を構成する土木、建築、造園の各分野の人々は己の無力さを多いに反省した。
 その現地調査においてまだ火がくすぶっている長田区に入った人によれば「自治体のヘルメットをしてくすぶっている街を歩いていたら、自宅の焼け跡を見守っている老人に『測量だけは勘弁してくれ』と言われ、それほどまでに都市計画が憎まれていたかと落胆した」そうである。
 実はあの地震で火災被害が集中した地区は、公図未改訂の区域にも重なる。もちろん都市計画にもとづく事業がなされた地区では測量が入り、被害集中地区では入っていなかったのではあるけれど、では何故彼の老人は「測量」を恐れていたのだろうか?都市計画より、むしろ地域コミュニティの蓄積してきた登記ー公図ー実際の不動産の面積の乖離が地域コミュニティを壊す事を恐れていたのではないだろうか、との疑念を抱いている。
 これが私の内的な動機付けとなっている。
 次に着眼点となったのは、おそらく、公図未改訂や登記の不正確さをカバーできる情報となっている空中写真の撮影は、今後は継続されないだろうという仮説である。現在撮影されている国土地理院の空中写真は数cmの読み取りが可能な高精度の物で、国土の状態を測量し、地図に起こす事を念頭に行われている物であるが、現在国土の測量を1m精度程度の衛星データに移行すべく着々と技術開発が行われている。林野庁撮影の物にしてもおそらく衛星への移行を念頭に作業は進むと思われる。他に空中写真の撮影主体は固定資産税関係の撮影が行われているが、これは税務調査の一環なので公開されておらず、どの程度の頻度でどのような範囲をカバーしているか詳細には知られていない。
 したがって、今後近隣トラブルの解決のための基礎資料としての空中写真は政府の事業の副産物としては出てこなくなったり、撮影頻度が低くなる可能性が高いように思うのだ。現行制度をカバーしている政府の仕組みは早晩なくなるだろうと思っている。
 正確な公図の作成にしても、登記ー公図ー実際の不一致の救済にしても、現在が最高の精度で行え、今後コストが上昇していくならば、現時点で公図改訂を基礎とし、公図ー登記ー実際の一致するドイツ式の登記制度に移行すべきではないか、との提案には少なくとも検討に値する経済的妥当性があるように思える。

仮説とか、思えるとか、聞いた話とかで構成されているけれど、残念ながら小生はこの問題を担当している官僚とかの偉い人ではないので、正確な政策提言をする事はできない。
出来損ない日記ゆえに、この程度で勘弁しといて下さい。>先生