「そうだったのか」と全く思わなかった「渋滞学」

毎日渋滞に悩まされているし、昨日のNHKの朝のニュースでも取り上げられていたのでこっち方面にも少し言及しておこう。
http://www.shinchosha.co.jp/book/603570/
ASEPそのものの有用性はあるのだろとはおもう。
しかし、正直、「そうだったのか」とは思わなかった。
期待し過ぎだったのかも知れない。

まず、渋滞や森林火災の研究そのものはもうちょっと先に進んでいるという事。
著者が著者らの研究によって原因や解決の糸口が見つかったと言っている諸々の問題は、ASEPなんて洗練された手法が注目される前にもっと泥臭い方法で原因が究明され、解決の糸口が見つかっていた物である。
著者は「すでに発見されている原因」や「すでに使われている解決手段」がASEPでの解析結果に一致すると言っているだけだ。
今の著者は「実学の後を追いかける基礎科学者」に過ぎない気がした。

著者の研究の真価は、今後、解決策として用いられているが用をなさない物を切り捨てるとか、新たな解決策を発見するとかの形であらわれれば「実学を追い越した」と言える。この本はそれから書かれた方がよかったのではないだろうか。

道路交通の渋滞についていえば、土木の世界の一部の人たちは20年ほど前にはこの本に書かれたレベルの事はとっくによく知っていたように思う。ただ、実際に解決策を施すと、それを上回る勢いで通過台数が増える。穴を掘っては埋められるの繰り返しが行われている。渋滞を解決するためにはもう少し社会的な研究*1の方が役に立ちそうである。

今自分の直面している渋滞問題についても一言。
夏休みの帰省ラッシュなどで、多くの人が道路を利用しようとして混雑して渋滞が起きるというのはたぶん嘘。
昨夜も別に渋滞地点へ向かう流入台数は多くなかった。というよりどう見ても普通の平日の通勤時間帯の2/3ないし1/2を超えてない。
土日と帰省は「へたくそ」が多いから渋滞するんだと思う。

*1:たとえばドライバーを取り巻くインセンティブの研究