借地権ってそういうもんなの?

http://www.asahi.com/national/update/0813/TKY200708130304.html

山梨県、県有地を富士急に格安賃貸 随意契約で80年間
 山梨県が、山中湖畔にある県有地約300ヘクタールを富士急行(本社・同県富士吉田市)に、随意契約で約80年間にわたって貸していることが分かった。

え?

県によると、別荘地として利用されている県有地は山中湖の南側にあり、一帯はリゾート地として知られている。

つーか、山梨県と富士急で資金を出し合って山中湖村をリゾートにしたんだけど。
道路だって、富士急の通した道もあれば、自治体の通した道もある。昔は馬車鉄道も通ってた。

大手不動産業者によると、建物を建てる際の条件や、建築許可を得るための手続きは、県有地部分とほぼ同じという。

はぁ?どこの大手不動産業者よ。自然公園法上大面積の地権者ほど規制厳しいし、個別審査でしょうが。それと、リゾートとしての質と自然公園としての質を維持するための規制、富士急別荘地の外側では全然守ってくれないから地元自治体は頭抱えてるよ。

全国市民オンブズマン連絡会議の事務局長を務める新海聡弁護士は「公の財産の利用は平等でなくてはならない。貸すまでのプロセスが透明かも重要。随意契約で、一民間企業に低廉とも言える料金で貸すのは違法だと思う」と指摘している。

貸すまでのプロセスは単純明快、「明治末の水害に対して救援として皇室から恩賜された山林を活用して地域経済をもり立てるために県がリゾート開発を企画した。」そんだけ。資金は公費もつかったけれど、民間の活力も必要だった。で、貸し付けられた公有地を富士急が開発し、別荘地として転貸した。*1
それと、長期と言っているが、借地契約の法定年数は30年。賃料改定の法定は10年である*2。80年の間に法定では2回しか契約解除の機会はないのだし、一方的な契約解除や従前より高い賃料水準の設定には相応の理由が必要だろう。

また、借地の目的が転貸であり、地権者サイドの目的が観光開発であった事に鑑みると、末端価格で賃貸したのでは当初から借地契約そのものが成り立たないだろう。小売価格の50%で卸売りされていると見ればきわめて妥当だ。また、富士急が建設した位置指定道路や移管された村道県道を借りて富士急に寄生している「となりの事業者」と富士急に同じ賃料で土地を貸す事が果たして「平等」と言えるかどうかははなはだ疑問である。
 そもそも目的に沿って合理的な賃料設定であれば合法なんじゃないか?そうでなければ公営住宅事業なんてありえないだろう。

 県の先見の明か、富士急の努力か、いずれが主であるかはよくわからないけれども、農業もままならず林木の成長も僅かな高冷の地の寒村が、村民総生産の90%は対外来者サービスで生み出されているという一大リゾートとなった。地価が上がり、県も、富士急も村民も利益を享受している。むしろ今後に期待なんじゃないかな。

*1:このような民間資金を活用した公有地貸し付けタイプの開発は戦前は普通で、税とならぶ公共部門の収益源だったけど、ほとんどは戦後GHQによって借地権者に安値で払い下げられた。有名なのは浅草六区でしょうか。

*2:これは現行法で、この契約は古いのでより借地権者の権利の強い旧法に拘束されていると考えるべきだろうけれど