中緯度の森林の二酸化炭素吸収は夏が最大?んなわけないでしょ。

もう一つ現実に見える観測事実と、モデル構築時の前提条件の話。

森林の二酸化炭素吸収量は従来考えられた量の半分って話*1に関連して、成長しない森林は二酸化炭素を吸収しない、って話*2と、二酸化炭素を貯め続ける群落の話*3を書いた。
大雑把に言って、陸上生態系の二酸化炭素吸収量は光合成による成長速度と、分解速度によって決まる。
分解速度=成長速度なら吸収量0なわけ。

で、「従来の半分」説を唱えてる論文を読んで、どうも著者らは「陸上生態系の吸収量は夏が最大」と思い込んでるみたいだったので、このモデルの導く結果は信頼できないと思った。

第一に、日本のような季節変化のある土地に成立する群落は、必ずしも夏の暑い時に最大の成長が可能なわけではない。いやむしろそんな群落はすくないんじゃないだろうか。夏場には温度が高すぎて十分成長できない「高温障害」や、強すぎる光によって光合成効率が落ちる「強光障害」を起こす植物の方が多いんじゃないだろうか。植物がその場所に適応的なのはたいてい「通年で他の種より成長できる」からであって、一番光が強く温度が高い時期に適応しているわけではない。

第二に、夏場は植物の呼吸量が大きくなり、純生産量はむしろ小さくなる。

第三に、植物群落の足元には脱落した葉や枝など、成長の結果である有機物が大量にあって、その分解速度は温度上昇で指数関数的に増える。従って、年間の脱落量のうちかなりの部分が夏場だけに分解される。

  1. 光合成は必ずしも真夏が最大ではない
  2. 真夏は植物自体による呼吸量(分解量)が大きい
  3. 真夏は土壌における分解量がとてつもなく大きい

このへんは観測された事実だと思う。(自分で観測したわけじゃないけど。)

で、真夏に陸上生態系の吸収量が大きくなると考えてるようなモデルから「吸収量は小さい」なんて結果が出ても、信頼するに値しない気がしているのだ。