計算の根拠がおかしい

日経BP
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090407/191216/?P=1
「教育費をタダにせよ」
親の所得格差が生み出す教育格差は亡国への道

 翻って、日本はどうか。子ども1人を大学まで進学させるためにかかる費用は、公立の学校に通ったとしても、1000万円を超えるコストが必要だと言われている。私立であれば、その倍は優にかかるだろう。日本の平均給与は約437万円(国税庁平成19年分民間給与実態統計調査結果より)。この中で、子どもの教育費を払い続けるのは至難の業と言っていい。

論旨に問題があるわけじゃないが、こういう議論をする時に、平均給与というのは給与が出ている人の話なので、失業者を除外して計算するのは変な気がした。失業したから子供を捨てられるわけではないので、給与所得を(1-[真の失業率])で除したをかけて補正した数字とかでみないとミスリーディングだよね。

誰か名前つけないかなぁ。

第1に、教員の給与や年金は他の職種に比べて優遇されている。特に、教師の場合は共働きが多く、45歳を過ぎると、世帯収入は1600万円超。退職金も2 人を足せば、6000万円程度になる。退職時に1億円の現金がある教師も少なくないと聞いている。給与削減の余地はあるだろう。

 平均給与とのコントラストですごい数字に見える。どうして今現在45歳以上の勝ち組教師だけ抜き出すかなぁ。40歳以上共働きの教師だって、非常勤講師とかで食いつないで35歳でなんとか常勤に食い込んで共働きで初産が高齢になったリスクを乗り越えてなんとか子育てしてるとかもう珍しくないのに。

 教育費を公共が持つという事ならば、どんな正規雇用勝ち組共働き子育て世帯だって給与削減/増税の余地はでかいだろうさ。「増税なき財政再建」のご神託がなければなんとでもなるんじゃね?

子供は欲しい時に好きなだけ産めるわけではないし、子供の数に小数はない。
 実際に家族計画下で二人目の子供を育てる決意をする時には
a.金銭的余裕が十分である状態が継続しており、継続する見込みがある
b.時間的負担をする用意ができている
c.運がいい
の3要素が揃っている必要がある。

 よく国が使う「平均世帯で子供二人を育てられる」モデルでは、まず所得の分布でaの条件が整う人は全体の半数以下になる。たとえば、国税庁平成19年調査では38%の人が年収400万円未満の層に所属する。これを乗り越える確率は0.6としよう。
 次に、bだけど機会費用の問題でもあり見積もりのむずかしいところだけど、ここが0.2-0.8くらいで変動するかもしれない。
 cについては平均初産年齢が29歳くらい、30歳の不妊率は15%くらい。これを乗り越える確率はまあ0.8くらいある。

0.6*[0.2-0.8]*0.8=[0.096-0.384]

3人育てる人もいたりするが、一人も持たない人と相殺すればそれほどずれないだろうし、このモデルを確保して実現可能な合計特殊出生率は1.0-1.5くらいのレンジにおさまるだろうと思う。

というわけで、国のたてたモデル*1通りに少子化しているというのがこの国の実態なんだね。
1980年代以降の日本は国策で人口維持をあきらめたんだと理解すれば、何も不思議なことは起きてないよね。
*2

追記:
要約すると
「日本では第二次臨調以降は亡国は既定路線ですが何か」っつーことです。
別に官僚が腐ってるとかそういう事がいいたいわけではありません。念のため。

追記2:
子供三人モデルで考えてみると、インテリゲンチャー&大変な仕事の教員が共働きで45歳1600万というのは、それほどの余裕があるようには見えない。田舎なら当然に車二台維持必須だし、共働き維持のためには単身赴任の覚悟は必要。
 繰り返しになるけど、しかもこれ、新卒採用で教員になれて、特に問題なく23年勤められた、教員の中の勝ち組の夫婦ですね。勝ち組の二乗です。そういう人本当に多いの?*3
 昔から勝ち組ではない人はいた*4し、今はもっと多いのじゃないかな*5
 一人平均400万円台の社会ならいろんな業種の勝ち組で年収1千万、勝ち組の二乗で年収2千万というラインが妥当なところでいいんじゃないのかね。

追記3:
トラックバックをいただいたのだが......趣旨が伝わってないと思うし、意図がよく読めない。

  • aの項については第二次臨調を受けての「平均世帯収入(当時600万円)の世帯が子供二人を教育できるレベルまでマイナスシーリングによって教育予算を削減する」(だいぶ前の事ですので記憶が曖昧になってますが)という国の方針をあてております。
  • bの項は、先進国における少子化要因(女性の高学歴/高収入化など)を含む項です。変動の大きさでわかると思いますがほとんど何も予想してません。
  • cはいいかげんな医学関係の文書からです。

「先進国うんぬん」のような難しい事は考えないでも我が国の合計特殊出生率は1.5を下回る事は容易に想像がつきますし、早期の民族の滅亡という事は予想可能ですね。そういう国策の国に変な切り口で突っ込まれてもねぇって事です。勝ち組の所得が高い話は最初から相手にすべきではなくて、そこらじゅうにありふれてる年収200万の教員も見ろよ以上の意味はないです。

*1:追記:子供にかかる負担のモデルたてたのは官僚じゃなくて経団連と某大学の経済の先生だけどね

*2:人口維持を目標にするなら議論の対象は平均所得ー子供三人モデルになるはずで.....

*3:W大学卒には多いとか言う自慢なのかなぁ、だとしたら聞く耳持ちたくないなぁ

*4:金八先生は設定上どういう人だった?

*5:口利き疑惑の陰にはそういう悲惨がないとつじつまが合わない気がする