二時間鈍行電車に乗ってた

みたもの




雲が低くて、谷間を走る時には鉄道の走る高さより上は乳白色。
眼下をみわたしてもうっすらと靄がかかっている。
よく土砂崩れを起こす斜面のあたりはウツギの白い花。
白を突き抜けて混じるのは野方図に大きくなった桑。
薄とセイタカアワダチソウの草むらと、あまりに人工的に生えそろった水田のモザイク。


上方の崩れ出しのあたりに木天蓼の白い葉とミズキの白い花。
尾根の突き当たりに、半分枯れて赤と緑の二色になった枝を張り出す松の大木。
段丘に挟まる谷底近くにはクルミ、その上に栗が背を伸ばし放題。
家屋の脇から勢いよく、小さな谷を埋め尽くす孟宗竹に追い立てられるように。
孟宗竹に混じる赤は中途半端に手入れされ枯れたスギ、竹林のきわに一面のヘクソカズラ


大枝が枯れて白くなり、蘖と部分的に生きてる枝に数多の芽が吹くのは山桜か。
その下の細道を歩く小学生のランドセル。
家屋があったらしい棕櫚の密林。
その縁を取り巻くように色の薄青とも薄桃ともつかぬアジサイの花。
線路横の盛り土にイタドリとクズとススキとカナムグラにヨウシュヤマゴボウ
と、近くを見ていると余りにも急に暗くなるトンネル。


トンネルを出ると林立する碍子の変電所。
どこから逃げ出したかテカテカとした電飾のようなマツバギク
打ち捨てられた栗畑と桑畑、なぜかよく手入れされた梅林。雑草だらけの家庭菜園。
雨が降ったせいで谷の水量は多そうだが伸びた枝に隠れてほとんど見えない。
法面に垂れ下がったクズが苔むした表面を削りコンクリートに扇形。


排水の悪そうな鉄道敷にドクダミの群れ。
駐車場の盛り土に挟まれた住宅の庭はキウイの蔓の陰。
ひょろひょろと背ばかり高い檜が藤蔓の冠をかぶっている。
平野が近づくと雲が低く、最後の山間を抜ける長いトンネル。
トンネルを出れば小奇麗な家も、朽ちた空き屋も薮も、みな雨にぬれた色。


緑に埋もれかけた神社の参道に踏切の赤。