どう法律や条例を読んだらそうなるんだろう?

id:prepreさんのところで気になるニュースを見かけた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050829-00000020-san-soci
「庭に排泄(はいせつ)物を大量にため込んだ男性宅から発せられるにおいで、住民は悩まされて二年半になる。」という中野区のニュースである。
行為自体が悪質っぽく見えるのはもちろんだが、それをめぐる行政の対応があまりにあくどいように見えて気になったのだ。
prepreさんのところには「行政がやりたくないからやらないだけ」って趣旨で書き込みをしておいたが、少し詳しく見られる用にしておこう。

 昨夏と今月二十五日には中野区が、親族の許可を得て、庭にある排泄物を片付けたが、男性はその後も排泄物をため続けている。

基本的には明らかに不衛生と思われるので、許可を得ないで片付けてもいいはずなんだが。

 住民は今月初め、千人分の署名を集め、取り締まりを求める嘆願書を警察や行政に提出した。
 だが、警視庁は「悪臭を感じる度合いは個人で違う。不眠などの直接被害がない段階では傷害罪などの適用は難しく、店が閉店に追い込まれたことを業務妨害に問うのも悪臭でどれだけ客が減ったかなど立証は困難」(中野署)という。
 都の環境確保条例では悪臭を規制できるが、あくまで事業所や工場が対象で、「そもそも庭に排泄物をためる行為を想定していない」(中野区)という。

下の方に条文の関連する部分を引用しておいた。軽犯罪法違反で、警察官の判断で介入できないのか、東京都の環境確保条例が「あくまで事業所や工場が対象」なのかどうか、それぞれの目で条文を確かめて欲しい。ついでに、奈良県平群町の騒音による傷害事件についても、本当に「警察が被害発生までに介入できないのか」も確認して欲しい。

「介入することは許されている」それでも「やりたくないからやらない」事によって「刑事犯罪になるほど被害が拡大した」のだというのが私の印象である。
*1

軽犯罪法(抜粋)
第一条
 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十一 相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者
十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
二十四 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
二十七 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
三十一 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
第二条
 前条の罪を犯した者に対しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。
第三条
 第一条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。
第四条
 この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(抜粋)
(規制基準の遵守等)
第百三十六条 何人も、第六十八条第一項、第八十条及び第百二十九条から前条までの規定に定めるもののほか、別表第十三に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては、人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超えるばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の発生をさせてはならない。
(勧告)
第百三十七条 知事は、第百二十六条の規定に違反している者に対し、違反行為の停止又は必要な措置について勧告することができる。
第百三十八条 知事は、騒音又は振動が第百二十九条から第百三十三条まで及び第百三十六条の規定に違反することにより、周辺の生活環境に支障を及ぼしていると認めるときは、その違反行為をしている者に対し、期限を定めて、生活環境に及ぼす支障を解消するために必要な限度において、騒音又は振動の防止のための方法、施設の改善その他の必要な措置をとることを勧告することができる。
(停止命令等)
第百三十九条 知事は、第百二十六条、第百二十九条から第百三十四条まで及び第百三十六条の規定に違反する行為をしている者があると認めるとき(騒音、振動及び廃棄物等の焼却行為については、前二条の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないとき)は、その者に対し、期限を定めて生活環境に及ぼす支障を防止するために必要な限度において、当該違反行為の停止、施設の改善、ばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の防止の方法の改善その他の必要な措置を命ずることができる。
2 前項の規定にかかわらず、知事は、前条の規定により勧告を受けた者のうち、第百三十二条に定める営業を営み、又は作業を行う者が、その勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、生活環境に及ぼす支障を防止するために必要な限度において、騒音の防止が必要な時間の当該営業又は作業の停止を命ずることができる。

追記:
なんでこんな事を知っているかっていうと、騒音被害に悩んでて、警察や自治体に相談したけど、条例にないとか法律にないとか言いやがるので、条例とか法律とかコピーして見せたんですよ。そんときの担当者(司法警察員と担当課長)の答えが「認識不足でした、でも介入したくないから放置します」ってことだったんで。

追記2:
中野の悪臭事件報道で、一番態度悪いと思ったのは新聞記者です。
 サービス残業が常態で安月給の警察や役場担当者に「対応や介入する力」が不足しがちなのは確かな気がします。「やりたくないからやらない」、だけでなく、議会の予算制限で「どうしてもやらなきゃいけない事以外するな」って命令が出てるわけですから。条文を精読する時間がないほどにね。どうせ担当者や個別の警察官に必要な研修もしてないんでしょう。
 でも、新聞記者って、相当の高給取りでしょ。「条例名まで教えてもらってて条文読まずに記事書いて『規制がない』事にしちゃった」っぽいのはすごくまずくない?

*1:悪臭については規制基準が定められていないようなので、都条例条文の「人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度」を基準とすることになるのだろう。具体的には6段階臭気強度表示法で3以上であれば規制可能と解釈するのが自然な気がする。