新聞記者は世間知らずらしい

 国土交通省は22日、土地登記の際などに使う地図の「公図」で、都市部の6割に「1メートル以上の大きなずれ」が見つかったと発表した。
 公図は、明治初期の地租改正の際に作られた図面が今も多く、これまでも正確さに欠けるとの指摘があったが、明確に裏付けられたのは初めてという。

http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/20061123/5f15268cf02c567ebf99ed8c6ca7bffe.html
って、国土交通省はまいどまいど手を替え品を替え、公図の不正確さを指摘し続けているよねぇ。少なくともこの20年は。毎回説得力のある新しい資料がついててより明確になってると思う。「明確に裏付けられたのは初めて」ってのはそういう意味だろう。

新聞記者はそれでもなおらないのはなんでだと思ってるんだろう?
官僚の怠慢っていいたいの?少なくともこの20年、公務員も地方公務員もこの問題にまともに取り組んできたみたいだよ。

 今のところ土地の所有権などへの直接の影響はないが、地籍調査が進まないと、将来的には土地の売買などで支障が出る恐れもあるという。

日本の法律では、売買契約の内容を登記するので、土地を目で確認して、だいたい30坪と思って売買したら、それを登記してもいい。そもそも正確さなんていらない事になっている。所有権を証明するのに線の長さや、面積が正しい地図は必ずしも必要ない。
 実際には30坪の土地を、60坪と登記しておけば「何が登記されているか」を知らない買い手が騙されてくれるかもしれない。情報の非対称性を制限するために重要事実の告知が義務づけられているが、そんなもん、世間知らずの買い手なら正確な情報を与えても読めない事が十分期待できる。
 一方で、正確な公図ができて、自分の所有地の面積が正確に出たら当然ズレが顕在化する。隣の土地が思ってたより広くて自分の土地が思ったより狭かったら、短絡的な人なら隣の人が塀を動かしたとか思い込んでトラブルになる可能性もある。(国土地理院で空中写真を購入する人にはこの手の人が実に多くて、裁判の証拠にするために証明付きの拡大写真を買っていく。弁護士もついているとおもうんだけど、制度がどうなってるか説明しないのかねぇ...)
ごく普通にトラブルも発生していて、珍しくもないのだけれど、それって役人的には可能性なんだろうけど、新聞記事でも「可能性」で良いの?
 というわけで正確な公図ができればみんな幸せというわけにはいかないし、土地所有者に限れば不幸になる事の方が多そうなので、正確な公図を作るための測量は地権者の反対にあって進まない。
 ドイツのように、正確な公図を作成し、公図上で土地を特定し、公図に即して登記しなければ土地の売買契約が成立しないようになってればまた違ったんだろうが。

 今中国はドイツ式とフランス式(日本を含む)の中間の制度を土地取引登記制度に採用しようとしているらしい。国土交通省はちょっと焦ってるのかもしれない。

半径10mには一戸建てを買って住んでる新聞記者もいるだろうし、新聞社自体だって多分土地所有者なんだろうと思うのだが、いったい何を確認して契約しているのやら。
多分新聞記者はお金に困ってないので、登記上60坪で実際は30坪の土地を買っても気にしないんだろう。

追記:
役所がいくら説明責任を果たしても、所有権を守るための法体系のおおがかりな再構築をするのは別の役所の仕事だし、再構築は土地を持ってる人には都合が悪いし、持ってない人は世間知らずだし、銀行なんて下手すると新たな不良債権が出てくる。国民が改革を求めるほどの事は起きていない。だからやれない。ただそれだけの事。
 まぁ、やればまっとうな「構造改革」なんだけどね。