期待する権利とは?

私がトンカツ屋さんだったとしての想像上の話。

うちの店は胡椒をきかせた衣のちょっと変わったトンカツを出すので多少噂が立つ程度。客の入りはかんばしくない。
多くの人に受け入れられるとは思ってないけど、もう少し稼がないと店の維持費用までは十分でない。
こないだ自転車にぶつかられてひびが入った看板もなおさなきゃ。

そこにテレビの取材の話が来た。
ディレクターによれば、お店の宣伝にもなるので是非ということだった。
看板の事が頭にあって、一見さんでも来てくれればうれしいなぁ、と欲の皮が突っ張った。

いや、テレビの取材って大変だ。何十人もスタッフが店に来て、絵が決まらないとか言って厨房設備の一部まで取り外すわ看板なんて乱暴に除けられてとうとう割れちゃった。

んで、取材中は店で雇ったサクラ以外のお客は断らなきゃいけないし、絵が決まるまで延々何時間もトンカツ揚げ続けて、材料も大量に無駄にした。

んでもって、奴ら片付けないで帰るんだよね。もうへとへとだったよ。

で、待ちに待った放送当日、大どんでん返し、「これはまずい、くえたもんじゃない謎のトンカツ」だって。
あわてて放送局に電話したね。
なんでも捨てたつもりの撮影用トンカツ(もっと濃い色に揚げてくれって言われた奴だ)をスタッフが持ち帰って、プロデューサーに喰わせたら「まずいよ、これ」って言われて、取材した中身を「まずくみえるように」編集しなおして最初の予定と違う内容で放送したんだそうだ。

俺は怒った!裁判するぞ、せめて店に与えた損害くらい賠償させてやる!
と、いうことで休業補償とサクラのバイト代と看板代とトンカツ代、厨房設備なんかの金額いっしょくたにして100万円請求して民事告訴した。

判決が出てみると、裁判てのは厳しいね、いや、100万円どころか、結局5万円分しか認められなかった。

ところが、その5万円ですら不当だって上告されるし、テレビの連中とか新聞まで「編集の自由を侵す」とかいいやがるし有名ブロガーは「テレビに期待してはいけない」とか、「トンカツは実際にまずかった」とか言うし、ややこしいことになっちまった。

そういう話じゃないでしょ。そりゃうちのトンカツがまずいって人も多いかもしれないし、放送局には編集の自由とやらがあるかもしれないけど、何らかの形で人に損害を与えたら賠償しなさいってだけの事だと思うけどねぇ。
(参考:
http://news.google.co.jp/news?hl=ja&lr=lang_ja&ncl=1106178311
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/43a70d9ee119c0abefd9399845013e51 )

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*1:戦争責任云々の団体には好意をもっていない。でも、「報道の自由」=「支払わない自由」だとでも言いたげな論説が多くてびっくり。期待させて協力させて、期待をハズしたら、まぁ払うべきものは払って清算した方が良いのではないのかなぁ。たとえトンカツが実際にまずかったとしても。