家を持つ事について

 家を持つという事は負債を抱える事に過ぎないという「金持父さん」の指摘に対し、冷静に「こうだよ」と解説しているページがあった。
 http://d.hatena.ne.jp/ryozo18/20070301/1172724254


 言うまでもなく、持ち家は資産だ。ただ、それが自分たちのキャッシュフローをどう変えるのか中長期的に考えて評価しなければ、あるいはその評価が結果的に悪い方に外れれば、簡単に不良資産になる。そして、不良資産になると、住宅ローンの担保になっている場合はそう簡単に手放せない。持ち家が悪いわけでなく、リンク先でいうところのレバレッジの効いた有利子負債がキャッシュフローを痛めつける。


 自分が持ち家(ローン付き)を購入した経緯をふりかえると、まずやった事は家計のキャッシュフローを冷静に見ることだった。転職で収入が激減した影響で、過去に積み立てた金融資産が目減りし、増大した固定費用に流れ込み、赤字に陥っていた。
 次に、3.5年分の赤字に相当する金融資産を預金に残し、残り*1を積極運用して株式投資した。
 当時株式が低調だった上、日経225入れ替え騒動などもあって、安く仕込めた上に、さらに運良くいわゆるITバブルで株価は上がった。が、堅実だった会社の言う事(中期経営計画)が変わり*2、信じられないので、堅実であり続けた会社を残して利益確定した*3。手元のキャッシュは赤字10年分くらいになり、株式評価額は赤字2年分くらい。
 株式投資で得た資金は赤字6.5年分くらいだったが、ちょうどその頃、住みたいマンションの出物があって、だいたい20年分の赤字に相当する金額で入手可能という事がわかった。
 そこで、手元現金を頭金に住宅ローンを組み、購入した場合のキャッシュフローを試算した所、15年のローンで建物の減価償却を含めても黒字転換していたので、購入した。3年の固定金利で以後変動だが、金利リスクには手元の株を売って元金を圧縮すれば耐えられそうだった。
 現在では給与所得はなんとか転職前とほぼ同じ水準に戻り、ローンも返しているが、不動産の価格低下と金利負担を考えると、さほど貯蓄できている環境ではない。主に資本の部を拡大してるのは株価の値上がりという感じである。



 バブル時代に持ち家を買った団塊の世代について、家計のバランスシートとキャッシュフローを想像するに、バランスシートの不良資産化はものすごいだろうなぁと思わざるを得ない。
 バブル時代の高金利35年ローンでは10年払っても元金はさほど減らない。あの時代の住宅ローン契約の数だけ、不良資産と有利子負債を抱えた家計が存在したと考えていいだろう。それらの一部は失われた15年のあいだに細々と処分されてきたとしても、かなりの部分はまだ家計の重荷になっているだろう。
 内需主導の景気回復が見られない理由の一つは家計のバランスシートが長い間壊れっぱなしだった影響も大きいのではないだろうか?
 飯田先生がhttp://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20070111#p1の脚注で「退職金の使い道の筆頭は住宅ローンの繰り上げ返済であろうと考えられる」とおっしゃっていたが、だとするとこれから3年間で団塊の世代の退職金受け取りによって家計がこの壊れたバランスシートのくびきから本格的に逃れられる事になる。
 日銀のこの時期の利上げは、そういう楽観的な根拠があってのことというより「あいつらにカネ持たすとバブルになるからなぁ」というのが強そうだけどw

*1:やっぱり赤字3.5年分くらい

*2:経営者的には構造改革したつもりなんだろう

*3:後にITバブルといわれた事からも、市場が中核事業を犠牲にしてITにシフトした経営計画を過大評価して企業経営の方向性を誤ったのだろう。