公示地価って何?

その場所に仮に更地、それも単なる更地でなく、周辺に対する私権上の配慮の必要がなく、法的限度いっぱいいっぱいの利用が可能な仮想的な土地の出物があったら、平米あたりいくらの値を付けるかを2名の不動産鑑定士が鑑定してつけた値段である。
 実際の都市には、法律の規制いっぱいいっぱいの建物が建てられる土地はまずない。*1
 さらに、周辺の私権に配慮しないですむほど大規模な更地などない*2
 これらについて、相対的に自由度の高い土地である大面積国有地の売却では、周辺取引実績の数倍の単価が入札され、バブルの象徴として記憶に残っている*3

 バブル崩壊で地価が下がったために、その土地から得られる収益を元に地価を計算しようという考え方も取り入れられている。
たとえば物件取得価格がx円、長期有担保金利が0.03(3%)で家賃収入がy、の時に0.05(5%)程度の収益利回りがあるのが妥当とすれば、
 y=(0.05+0.03)x
 のようになっている。
 これによって家賃から物件価値を
 x=y/(0.08)=12.5y
 のように求められる。
 たとえば、賃貸にすれば月10万円の家賃が見込めるマンションの価格は1500万円、50戸のマンションなら7億5000万円と出せる。*4
ここで問題になるのは、xが土地と建物の価格の合計であるという事と、家賃は建築や設備に対して下方硬直性が顕著である事。試しに平成7年と平成17年の物価指数(年平均)で比較すると、
 持ち家の帰属家賃を除く家賃
:96.0→100.0
 と、デフレ条件下で上昇しているのに対して、
 この間の建築費指数(平成7年3月→平成17年3月)は
;126.1→69.1
 すごい違いです。
で、この方法で鑑定すると、建築費が下がった分家賃が下がるなんて事はないので、地価(鑑定額)が上がっちゃう。

 さらに、法規制の方はものすごく緩和されているので、地方の調査地点の集中している県庁所在地の中心市街地では、超高層建築も建てられるようになっている*5。だから法律いっぱいに建物を建てた場合の収益はものすごい現実と差がある。*6

 というわけで、前のエントリも含めてまとめると、値上がりしそうな地点を重点的に調査し、需要度外視の規制緩和を行い、存在しないほど理想的な条件で算定し、建設費を下げた分はすべて地価につけ、と、あらゆる手段で公示地価に値上がりプレッシャーをかけてるわけです。
これ自体が非常に「ものすごくバブリーな*7数字」なわけですね。このバブリーな数字がマイナスになってた事自体もすごいわけですが*8

*1:隣の敷地を併合するとクリティカルに効いている法的規制をクリアできるため、どんな手段に訴えてでも土地を売らせるというのが地上げである。

*2:防衛庁跡地のタワーは23区の西の端まで電波障害を引き起こしているらしいし。

*3:公示地価の考え方から言えば、普通の取引は公示値地価の数分の一で行われている方が正しいはずだが?

*4:実際には比較的良好な物件を所有する不動産会社の目標利回りは7%程度かと思う。

*5:実際の建物の高さはせいぜい平均2.5階建て程度でも

*6:みんな超高層にしたら店子の数が足りないです。

*7:「需要と乖離してると思われる」という意味で

*8:追記:取引実態に合わないと叱られるので調整が行われてます。念のため