舛添氏の方針が出たようですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070908-00000104-yom-pol

舛添厚生労働相は8日、深刻化する病院の産科医不足について、「勤務環境が非常に悪い。報酬面で見てあげないと、医者が不足し、なり手がいなくなるので、(待遇改善を)やりたい」と述べ、産科医を診療報酬で優遇する考えを示した。

某所の日記のコメント欄にこんな事を書いていたのですが

          • ここから

あまり道徳ややる気の問題じゃないと思います。
訴訟リスクと投資回収の期待に応じて自然にシフトしたらこんなもんじゃすまない。むしろ医療関係者はインセンティブの構造変化に逆らうような事をしてまで医療の劣化に抵抗してます。

医師や看護婦のスキルにしろ、医療機器にしろ今の医療の投資って少なくとも金額的にかなり大きいですよ。
しかも継続的に投資してないと間違いなく訴訟リスク/敗訴リスクは跳ね上がります。

今から小児科開業したりお産扱うために開業したくて資金調達できますかね?
小児科や産科を開業する場合と他の科を開業する場合、どのぐらいのプレミアムが金利に乗るのが妥当だと思う?
プレミアムなしだとしても、他科より楽に返済できるわけはない。
そもそも保健医療費は頭打ちってのは政府の方針なんだから医療全体が厳しい状況におかれてますよね。

しかも、小児科と産科はどちらも訴訟リスクが非常に高いときたもんだ。

          • ここまで

 この部分に対しては有効な政策となっていると思う。
だけれど、奈良、そして新しく出た大阪の事例で問題になっている「未受診の妊婦」の問題については有効な対応どころか逆効果だと思う。*1

 10年ほど前、スエーデンから来客があって、妻が妊娠中だったけれど、所得の補償*2はおろか、分娩費の一部くらいしか公的負担がなく、受診に健康保険も使えない*3事を知って、「日本って先進国だと思っていたけど、そうじゃなかったんだな」と言われた事*4を思い出した。
 医療関係者が書いているらしいブログで、未受診を「無責任」となじるのを見ましたが、30-35歳の働く女性の年収は平均で300万円くらいではないでしょうか?中央値はどのくらい低いんでしょうか?仮に250万として、シングルマザーを想定したら、毎月1−3万円の医療費*5を支出しながら分娩費用を貯金するのが大変な事くらいすぐわかります。
みんな大変でも当たり前にやってきたなんて話をする人が多いですが、世の中の人はいろいろだから、胎児に対する責任感もいろいろです。
 いろいろ度合いが変わらなくても、子を産む世代の所得が抑制され、高齢者の医療と年金の負担がふえたら未受診妊婦は増えるに決まってます。倫理とか責任感とか持ち出す前に、未受診妊婦が増えるような環境は出来上がってるわけです。
 だったらややこしいものを持ち出さずに淡々と対応するべきなんじゃないでしょうか。

*1:交通費など、医療報酬以外の支出と機会損失が減る効果で相殺する部分はあるだろうけど。

*2:彼の国では出産休暇や育児休職は有給の休暇/休職で、休ませた企業の損失を政府が補填するらしい。

*3:あちらの国では当然のように無償

*4:追記:その前に、「アメリカは永遠の発展途上国を目指している」という意見が一致してました。ですから当然アメリカは先進国から除外されてます。

*5:薬剤も当然無保険ですので投薬があると簡単に5万くらいいってもおかしくない