もう一度三丁目の空がきれいだったかどうかについて。

矢野さんのページに出てた三丁目の夕日問題
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20071129/p1

困った時はお互い様です。ああ懐かしき三丁目の夕日的古き良き時代。でも、その当時はすでに東京の空はスモッグで汚かった。

で、http://d.hatena.ne.jp/kumakuma1967/20071122#p1で触れた朝日新聞記事*1のリンクが来るわけです。
*2
追記:
矢野さん個人の問題じゃなくて、あちこちにこういう意見がたくさん見える。やっぱりちょっと気になる。ちゃんと咀嚼しないで、聴きたいような意見だけを受け入れる雰囲気はやっぱりあるんじゃないだろうか。朝日新聞の記事は単なるアンチ「三丁目の夕日」ではなくて、もう少し客観的なものの見方はないか、という提案なのに、提案が心地よいからそれを受け入れるというのはもう一度三丁目の夕日以下のレベルに陥っているだけじゃないのかなぁ、と疑問がわいている。少し調べる、という事もしていないのだけど、少し考えるというレベルで対抗してみたくなる。

朝日新聞の記事ではデータソースも書いて、データをこう読んだからこうなんじゃないのと意見を言っている。読者は、どういうデータを元に話をしてるのか突っ込めるし、ある程度その意見が正しいか正しくないか判断する事ができる。
単純なノスタルジーについてデータを元に突っ込むのは良い事だと思うし、反証の機会も提供しているから、ぼくは元記事は良い記事だと思う。
でも東京の空についてのこの記事の意見はあてにならないと思ってます。データソースまで示してあるのだから、肯定的に紹介するにはそれなりの責任があるような気がしますし。

そもそも千代田区と港区では皇居フィルターの効果も全然違うし。東京の大気の質ってものすごく不均質なんですよ。今でもそうだけど。それと、当時はもっと大気汚染が局所的だった事も考えなくちゃ。
元記事で

すす状の「ばいじん」も観測された。都の調査では、千代田区にあった紙製品会社付近では同年2月、1キロ四方あたり221トンが地上に降り注いだ。中央区日本橋では月平均で同31トン、東京タワーに近い港区芝でも同16トンほどに達した。

とあるけどものすごい開きがあるでしょ。気象庁から霞ヶ関が見えたかどうかは港区の風景がきれいだったかどうかの参考にはならんのじゃないかと思わないと変です。それを頭に入れてから前にあった記事を読むと

気象庁によると、59年10月〜12月に、東京・大手町の庁舎からの見晴らし(視程)が10キロ以下の煙霧(スモッグ)を74日観測した。天候にかかわらず視程2キロ以下で東京タワーはもとより霞が関の官庁街がかすむ日も多かった。89年度以降に濃い煙霧(視程2キロ以下)を観測したのは6回。当時の空がいかに汚れていたかが分かる。

気象庁や中央官庁のある千代田区の煤塵は日本橋のある中央区の6倍、東京タワーのある港区の13倍もひどかったんですよ。参考にならんでしょ。(こういうのが読めるようにしてあるのはこの記事の優れた所だと思う。)

公害対策以前の大気汚染はわりと近くで発生して近くに落ちるご近所の汚染なんですよ。公害国会以降はこういう汚染は煙突の手前で落とすからあまり発生しない。ディーゼル自動車が叩かれたのは最近までその例外だったからとも言えるかもしれない。こういう汚染を出す汚染源が皇居の北側では北西に向けて連続するけど、港区では汚染源と皇居で遮られる。

現在の港区あたりで秋から冬に汚染物質がどう運ばれているかは
http://202.215.250.162/bunpu1/air/mapmenu.asp
を見るとよくわかります。
多摩地区に滞留した汚染が卓越風に乗って港区に運ばれてるのがよく見えますし、今でも港区が虎ノ門霞ヶ関より空気がきれいなのも確認できますね。
当時は全総より前で、太平洋ベルト地帯も連続的に形成されてなかったっす。
西側から運ばれてくる汚染がなかったら、港区ではずいぶん夕日がきれいに見えたんじゃないかなぁ。

当時の「東京の空」がきれいか汚いかっていったらかなり汚かったろうけど、その汚さが「東京の空」レベルで共有されるのは1960年代に入ってからだろうと思う。

追記:
その意味で1960年以前の東京の人は、汚い空気の下で暮らしてる人が多かっただろうけど、なんかの機会に、今の東京じゃ考えられないほどきれいな夕日を見ていたのではないだろうか。
 小笠原諸島の父島で、北海道の利尻島で、屋久島で、バックグラウンドの空にほとんど濁りのない夕日というものを見た経験はある。「あのころ」には東京の人口密集地から徒歩で行ける範囲でそういう夕日が見えた可能性は、新聞に出ているデータだけでは否定しにくいんじゃないだろうか。

なんかね、今のコドモは理科の基本的な考え方を応用する学力が落ちただかなんだかってのを朝のニュースでやってましたけど、「大気汚染」「スモッグ」「太平洋ベルト」「海風陸風」「偏西風」「季節風」どれも小学校で習う事でしょ。そういうのの応用できないのって今の大人でも普通なんだと思うんだよね。おいらも興味ある分野でないとダメ。なんでコドモと学校だけ責められてるんだろうと思った。

*1:http://www.asahi.com/life/update/1121/TKY200711210400.html

*2:軽く引用してるし間違った事をかいていないように思えるので、矢野さんには悪いけど、はてブでもこういう短くて肯定的なコメントたくさん読んだので空気に逆らってみる。