「自然発生」について

高校までに習う科学の話で、あまり専門的な話ではないのだけど。

「発生」と「自然発生」の違いって明確にできるかな、と考えてみた。

「発生」ってのは内因が揃っている時に現象が起きる事。例えば卵からヒヨコがうまれることなんかだな。
あるいは事故発生!なんてのは事故がおきる内因があって、特に周りが「事故起きろ」なんて思ってないし事故を起こそうともしてないのに事故がおきるって事に対応してる。

じゃあ、自然発生っていうのは何かって言うと、「必要な内因を欠いている」のに、不思議な事に現象が起きてしまう事なんだな。

例えば「ネズミが一匹もいない倉庫に麦芽の袋を入れといたら、春先にはネズミだらけになった」
これがネズミの「自然発生」。自然にはそういう観察不能な内因が揃っているという考え方。
もちろん、科学が普及してる現在ではそんな事を信じる人は少なくて、実際にはネズミが入り込んだんだろう、とみんな思う。(麦芽からネズミを自然発生させたらスゴいですよ。)近代科学が否定したモノの考え方の代表例の一つだ。

パスツールは、腐敗が生物現象で、「自然発生は起きない」から熱で滅菌すれば腐敗が防げる事を確かめた。もちろん、その当時でも多分清潔という事は重要視されていたと思うし、その価値も理解されていただろう。しかし、実験と考察によって「清潔」の意味は大きく変貌した。その成果のおかげで牛乳が普通に飲めるようになったり、盲腸の手術で死ぬ人が激減したりした。*1
渋滞についての渋滞学の研究成果は、ちょっとパスツールの成果に似ている気がするのだ。

で、今では科学的でない考え方の代表例の一つである「自然発生」を「発生」のかわりに使われると、まるで「水にありがとうと語りかけるときれいに結晶する」と言われた時のような違和感を感じてしまうのだった。

*1:最近では台所を化学的に滅菌しようとする人が増えて、薬剤を環境中に流出させるので、それはそれで問題なのだけど。