ファンダメンタルズとは

「ふぁんだめんたるず」って何よ?(すなふきんの雑感日記様)
http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20081028/1225147577

ビジネス番組なんかで最近連呼されるのが「日本はサブプライムの傷が浅く、経済のファンダメンタルズ的には問題ない。」といったコメント。で、じゃあなんで日本の株価下落率が先進国中トップクラスwなのかと聞かれて、「これは一時的な売り。株安とはいえ円高で相殺され日本株保有のメリットは大きいはずなのですぐに買いが入って上昇する。」とかいった説明してた市場関係者がいたが今ひとつ納得できなかった。

んー、株をやってる関係で、ちと真面目に考えてみた。素人の考えなので取引の参考にしない事を強く推奨する。

サンマの値段で言えば、市場に出かける前の「サンマ、100円くらいかな、だったら買おう」これがファンダメンタル。漁獲量を読んだり、チラシを読み込んだり、店の在庫状況を見たり、価格形成の過程に注目した値決め、そういうのがテクニカル。

で、サンマの場合は品質と量から考えられる価格でよかった。
株式は産業資本の転売価格なわけだけど、そのファンダメンタルズは資本を利用して、どれだけの利潤が得られるかって事だろうね。単純には採算性と売り上げが問題になる。

売り上げを考えれば、まず第一に、不動産価格の上昇分を借り換えて消費してた人たちや、その人たちに信用をつけた人たちが破綻して、売り上げが落ち込む。その分の消費の減少は確実に誰かの給料を減らす。そしてさらに消費が落ち込む。アメリカではサブプライムの影響で、クリスマスプレゼントがiPodプレステ3ではなくなったり、4年で新車に乗り換えてたお父さんが6年同じ車に乗るかもしれない(購入者の使用年数が1.5倍になれば、新車の販売台数は2/3に落ち込む)。

問題は、アメリカが世界最大の輸入超過国だって事だね。
サブプライム問題は世界中にある全ての「北米を最終消費者にしてる産業」のファンダメンタルズを毀損したように思うんだけどねぇ。
 アメリカで不動産価格の上昇でウハウハ生活してた人が居なくなったと同時に、アメリカに製品が売れてウハウハしてた会社もちと風向きが違った事になる。

 アメリカで売れてる最終製品って言えば、自動車なわけだけど、日本国内の自動車関連だけで日本の総生産の一割を超える規模がある。
 だから、そういうところで働いている会社の収入は減るだろうし、それが消費の停滞につながる可能性が高い。

 そういうファンダメンタルな地合いの悪さが(日本株だけでなく)出て来たのが、6月くらいかなぁ。7、8月は結構株を売りたい人が多くなったし買い手も慎重になって一割くらい下げた。

 んで九月十月にはさらに値を下げるわけだけど、これはファンダメンタルな要因とテクニカルな事情の複合。テクニカルな方がでかいようにみえる。ファンダメンタルには原料高とアメリカ/ヨーロッパの市場縮小が継続しているから、悪化はしているのだけれどね。

 日本の株価がFF金利と連動してるという話は前に書いた。けれど、円をもってる日本国内の人が日本の産業資本を買う場合にはFF金利は関係ない。日本の産業資本を取引するのがドル世界の人だからFF金利と連動しているわけだ。失われた十何年の間に、東京証券市場の主役はドル世界の人になってる。で、ドル世界の人が資金難になったら売りが殺到する。脇役は買い切れないほどの株が市場に出る。魚屋ならサンマ大豊漁。サンマだと冷蔵庫に入り切らないほど買う人はいないので、真面目に値段がつかなくなって大量投棄となるのだけど、株の場合はそうもならない。
 あらたに市場にキャッシュを入れて株を引き取ろうとする人と、株を売ってキャッシュを引き出そうという人がいれば、そのバランスで値段がつく。バランスが壊れて入ってくるキャッシュが一週間で1/2に減った場合、株価は半分になる。
 こないだまで1株1万円で売れてた株でも、一株5000円になるわけだ。たとえば、生保や年金というプレーヤーは、キャッシュが値上がりして株が値下がりしたら、キャッシュを株にかえる。で、一万円入れた時には二株買えちゃうわけだ。
 異常なオフバランスにはセーフティーネットもある。株は冷蔵庫に入れなくても腐らないから、取引を強制的に停止してもいいはずなので、取引の制限値幅に引っかかったら、取引できなくなる(ストップ高、ストップ安ってやつ)。
 だから、バランスがとれるまでは時間を要する事がある。
 主役が売り一色でも、いつか持ち株は尽きて簡単にバランスはとれる。そのときは脇役にあわせた規模に市場が縮小してボラティリティが高くなってるだろう。その時の平均的な価格は今よりもう少し上でもいいというのはまああってもいい意見なんじゃないだろうか。
 ラッキーな事に中間決算と通年見込みの時期だったから、売り上げや利益を減らした発表をしながらも、株価が戻した会社が多かった。

あと思うのは、バブルとかファンダメンタルズなんてものの実体っていったい何だろうということ。モノの値段がそのモノの実質的価値(って何?)を正当に評価してはじき出されたものという思い込みが強いんじゃないだろうか。

うーん、売り上げも利潤も通貨でしか判断できないから、貨幣世界の内側の話。バーチャルな話でしかない。テクニカルもファンダメンタルも確定して正当な評価が可能になるのは過去になってから。で。投資ってのはテクニカルもファンダメンタルも未定の未来にキャッシュを投げる事なんだから、「正当な評価」へのこだわりと「投資」は両立しにくいかもね。

 個人的にはファンダメンタルに考えるのなら「日本国内で貧乏人の買うものを提供している輸入が多いキャッシュ潤沢な会社」とか買っとけば、ドル世界の物価が低迷して円高で日本の貧乏人が増えても別に業績は悪くならないのじゃないかと思うけどね。村上ファンドが買ってた会社にイメージ近いな。

追記:
 あー、そうそう、よくわからないんだけど、CDSプレミアムが暴騰(プロが計算した倒産確率急上昇)でも、証券会社は「ファンダメンタルに対して売られ過ぎ」とかで買い推奨入れたりするよね。銀行が計算するプレミアムの増大はファンダメンタルな何かだよねぇ、多分。