痛い ニュース製造業

http://mainichi.jp/area/aomori/news/20090521ddlk02040064000c.html

火災現場に向かう消防車と(引用者略)女性が運転する乗用車が衝突する事故があり、女性が平川市に慰謝料など約275万円を求める損害賠償請求訴訟を青森地裁弘前支部に起こしたことが20日、明らかになった。

 訴状によると、事故は同月7日午前、同市原田の県道交差点であり、青信号で進入した女性の車の側面に、平川市消防団の消防車が衝突。女性の車は横転し、腕などを負傷したという。治療費は保険で全額支払われた。しかし女性は「消防車は赤信号を無視して進入し、横転させられて危うく死ぬ恐怖感を味わった」とし、慰謝料と車の修理費などを求めている。

なんか、緊急車輛の妨害をして訴訟する不届きな奴とか、痛い ニュースとしてあちこちで紹介されている。

側面対前面、乗用車対大型という事で、乗用車側の被害が大きかったということだろう。人身事故でもある。

信号の交通整理が必ずしも有効ではない消防車は徐行義務があり、乗用車は停止義務がある状況下。
一般的な判例集だと、基礎として優先側20:非優先側80の責任で分配し、大型車輛/特殊車輛の加重注意義務などを加味して消防車30:乗用車70という過失割合になる案件だろうか。*1

これで、被害が女性側にほぼ100%偏在していれば、事故の被害総額が増えれば増えるほど市役所から女性の受け取る額が増える状態ができ上がっているわけだ。

そういう状況で、治療費についてはおそらく自賠責の範疇で適当に話がすすむとして、慰謝料とかそういうセンシティブな要素が絡む被害があるとしたら、市役所側は簡単にそれを認めるわけにいかないだろう。それはそのまま市民の損失になる。
このご時世では、*2示談では僅かな被害金額の増すら市役所職員は怖くて認められないだろう。
まともに交渉するには裁判所のお墨付きが必要というだけの事だけど、まあ訴訟になるわけだな*3
高コストな社会でもあるわけだが。

地方は公用車で保険契約してるところもあり、保険会社同士の交渉示談で解決する事もある*4。でも、国の公用車とぶつかったら、相手がわるかろうとこっちが悪かろうと*5、裁判になる事は避けられないと言われていて、弁護士/訴訟費用まで保険でカバーというのは現状では意味を持っていると思う。

で、この記事を読んで、よく考えてみると、何の変哲もない事故処理で必要な訴訟が行われるというだけのことに見えるわけだ。

でも、この訴訟が複数マスコミによってわざわざ*6伝えられるという事は、なんか特定個人を社会的に葬る目的でもあったんだろうか?と怖くなるね。

追記:
緊急車輛の走行を妨害してはいけない。これは私もつよくそう思う。でも、だからといって、緊急車両と事故を起こした時には訴訟すべきではない、みたいなのもヘンじゃないかな。

*1:追記:女性の車の側面に消防車があたってるって事も加味すれば、女性の速度などによって40:60や50:50もありうるのかもしれない。

*2:「このニュースを痛い ニュースと読むような市民」も必ずいるだろうし

*3:追記:交渉の余地がないから示談ではたいてい済まない

*4:追記:運用する台数が増えると保険に入るメリットは小さくなる。しかし、交渉の自由度が低く訴訟乱発にもなってそっちのコストが高い。人と車の相対的価値は人の方が上がっているので、都道府県くらいまでは、保険会社の弁護士と顧問弁護士の判断の擦り合わせで示談できるようにして保険に入った方がトクになってきているのではないだろうか。

*5:追突のような10:0事故でも

*6:追記:それも一方当事者への取材を中心に