あれは、変態です

 わくたまさんのところ(http://www.13hz.jp/)で科学的常識について考えていたのだが、今日の日本は科学的常識を破壊するような言語環境の醸成に余念がない。たとえばホ○ケットモンスターなどというテレビどころかパンやカップ麺やはてはカマボコにまで侵入しているゲームキャラクターがいるが、やつらは自称「進化」すると語られている。説明を信ずる限りにおいて、一個体があらかじめ定められた通りに形態を変化させるので、進化などではない。小学校の授業を覚えている人にとっては簡単にわかるが、あれは「変態」である。
 このゲームに限らず、「成長」「変態」「進化」などの科学用語の意味をゆがめる人は後をたたない。ホ○ケットモンスターが「変態」と呼べない原因の一つは、心理学用語の「変態性欲」を「変態」と略する人たちが多いために、本来の意味で「変態」を使えないからだ(おそらくは略称であることすら意識せずに)。だからといって、「進化」の誤用をするのはやっちゃいかん事だろう。
 一般的には、しょうがなく使わない場合は「変身」とするのが一般的であるが、どうもいろいろ調べていくと、ゲームを売っている花札屋さんが「進化にした方が売れそうだから」という理由で「進化」にしたそうである。さらには、花札屋はそのことを得意げに吹聴している。つまり、我が国では論理的なコミュニケーションの成立基盤となっている公共財を、金儲けの目的で破壊することは肯定的な意味すら持ちうるという事であろう。
 もし、変態性欲という言葉がなければ、あるいは誤用されたり、変な省略をされることがなければ、カフカの小説のタイトルは「変態」になっていて、仮面ライダーは「へんたーい とうっ!」と叫んでいたかもしれない。そうすれば、昆虫の変態とカフカの小説、仮面ライダーの関連がちゃんと掴めるのに.....