武蔵小杉続報

↓の続報
http://d.hatena.ne.jp/kumakuma1967/20060504#p1

朝日新聞に建設ラッシュについての記事が出た。
http://www.asahi.com/life/update/0722/005.html
細かい突っ込みから

元々工場の集まる街だった武蔵小杉は、....

こういう「元々」の使い方はおかしい。
元々につなげるなら、
「元々企業や学校のグラウンドなど保養施設の集まる街だった」
だし、工場につなげたいなら
「最近まで工場の集まる街だった」
だろう。
両者併記すれば、武蔵小杉という街がいびつな発展過程を経ていることがよくわかる対比だ。*1

都市計画の専門家は、街づくりやコミュニティー形成の問題も指摘する。

とあって

「これほど一気に超高層住宅ができる例は海外にはない。同世代が一挙に入居すると、教育問題や高齢化も同時に起きる。しかも超高層は老朽化時の管理が大変。それらを考えた街づくりなのか疑問だ」と話している。

と専門家の言葉を紹介している。

 上海を見た事のある人なら「海外にはない」が大ぼけコメントなのはおいといて、国内の状況についての理解が不十分みたいな気がする。
 まず、昨今の改革の大合唱で規制緩和が進み、たかだか容積率500%程度の密度での住宅建設が進行することは「どこでも規制されていない」。国土交通省は改革勢力に抵抗しつつ対策に着手したばかりだ。急傾斜地であれば事実上容積率の規制なんぞないような状態なんだから宮前区などの急傾斜地においてピンポイントに人口密度が上昇するおそれに比べれば、まだまだまし。
 この手の大規模再開発で世代や階層の均質化の均質化が懸念されるのはもっともな事だ。しかし、地区内が全戸同一仕様で最初から住宅需要の質が同質の公団団地の大規模開発でなく、複数民間業者が、賃貸分譲混合で価格帯もまちまちの開発をするのだから、従来のニュータウン開発よりバリエーションに富む住民が集まるだろう。公共設備についても地図を見ると既存の小学校が近くになく、750mから1.5km圏内に少なくとも4校の小学校があり、学区と人材配置の調整と空き教室で何とかなるだろう。すでに多くの小学校を廃校にしたあとで人口が回帰した東京中心区と郊外は事情が違うし、学区の中心の開発と境界の開発ではインパクトは大きく違うのだ。*2
 また、我が国の固定資産税・都市計画税は土地所有者や一戸建てを優遇しているので、マンションなら一世帯あたり戸建ての数倍の税収が見込めるうえ、少ない拠点で基礎的なサービスが提供できて実は自治体の負担が少ないのだ。
 超高層規模になると旧来のコミュニティより一棟のマンションの方が人口規模がはるかに大きくなってしまう。コミュニティについては一棟一棟の内部に新たなコミュニティが作られないといけない。コミュニティ形成の難しさは一戸建てニュータウンでも、マンションでも変わらない。
 建物の中に商店や医者や介護マネージャーやなんかを配置できるかどうかは、競争になるのだろうな。
 問題は、エレベータ依存な暮らし方に対応できるかどうかの方が大きそうだ。駅前にあっても「駅からバス15分停留所前」とそう変わらない利便性(住んでみればわかる事だが、エレベーターの料金はタダじゃないし)やら、停電や点検の度に混雑して待ち時間が長くなる事*3なんかを考えた上で、30年、40年、50年後でも魅力的な住宅であり続けられるかどうかだろう。
 ある物件では管理費 12,300円〜20,100円、修繕積立金 5,400円〜8800円、修繕積立基金 350,500円〜573,000円、老朽化対応どころか何かあったら最もコストのかからない一回目の大規模修繕ですらちゃんとできそうもない水準な気がする。20年後の価値は大変心配だし、建て替えどころか取り壊し費用も出そうもないし、専門家が建て替えを心配するのは当然だろう。

*1:都市の発展がいびつなのは我が国ではちっともめずらしくない

*2:うちの近所でもっとバリエーションの低い開発があった。子育て世代中心の分譲マンションばかりで、合わせて超高層一棟に匹敵するほどの戸数だったが、小学校一校の空き教室で十分吸収できてしまった。

*3:一階に宅配ピザ屋があってもエレベータ待ちで時間内に届かなかったりして。