やっと問題になった

http://www.asahi.com/national/update/0420/TKY200704200343.html

水力発電所のデータ改ざんなどの問題で、国土交通省は20日、河川法に違反した電力10社に対して監督処分の内容を通知した。再発防止策を求め、重大な違反と認定した15発電所には水利使用許可取り消しや改築命令を出す。大量の違法取水で水利権を完全に取り消す東京電力原発電所(栃木県)など5発電所は長期間、発電が止まる見通し。水利権の取り消しは初めてという。

書こう書こうと思っていたけど、明るみに出た時にはちょっと手が出なかった話題。

同じ学部内に水文学*1の研究室があって、教養として水文学の授業をとって演習課題をちょこっとやったことがある人ならばダムの水量データは全く信頼できないという事ははっきりと知らされる。
 降水量の観測値からモデルを立て、河川の流量を計算するような演習をやる。やってみると、実測値と計算値が大きくずれる事がある、で、ずれるかどうかに大きく関わるのは電力会社のダムが存在するかどうかだ。そしてダムの上ではずれてないし、ダムの放水口の下流では時系列的な予測が乱れるが年間の流量は正確だ。
 私は洪水被害防止についての知識を得るために授業に参加していたので、利根川水系や小貝川といった河川で気象観測が水防に結びつきにくいという事に、非常に驚いた記憶がある。
 水文学的には単純にダムの流量データが正確でないと考えるのが普通であるようだった。実際に電力会社は正確な流量データを秘密にして公開してこなかった。明るみに出た事から考えて、水利権以上の流量を流している事を隠したかったのだろう。

 水文学的に水位が予測不能であれば、その予測不可能生の幅に合わせた余裕を持った流路が必要である。河川の幅が広げられなければ、予測可能性の低下分だけ堤防が高くなる。実は水害防止のための堤防は必ず地盤のよくない低地にあって、高くするためには堤防の幅を広くしなくてはならない*2

 たとえ5cmでも不必要に堤防が高くなったり、あるいは洪水被害を引き起こしてしまったら、水利権という権利以上に公共の福祉に対して重大な罪を負う行為となりうると思う。各社の配布するpdfを見て、「余分に取水したけど施設の限界を超えてないから安全だった」のようなコメントがあって憂鬱な気分になった。

*1:地上で水がどう動いているかを研究する学問

*2:地盤の支持力が小さいため狭くて高い堤防は沈下する。スーパー堤防は高い堤防に必要な幅を持たせるために、堤防上にも土地利用を配置するものだ