いわゆるサブプライム問題と日本の住専問題と似てる点

英語のサイトを見てみたけど、サブプライムってのは担保の問題じゃなくてやっぱり信用力の問題みたいね。だとすると、短期プライムレートのプライムと同じ意味でプライムが使われてて、最も信用力の高い債権よりは信用力が低いと言う事だ。だから、大半の借り手の債権はサブプライムってことになる。プライムレートより高い金利で借りてるうちの住宅ローンもサブプライムローンだった。終了。

いやいや、それが住専とどう似てるかって話をする予定だったのに、終了してちゃしょうがない。どうしてあんなに信用力が高かった住宅ローンがこんなに信用できなくなったのか、それを見ると、日米はすごく似ている。サブプライムかどうかの問題ではないみたいだけれど。

似ているのは「元金返済を伴わない住宅ローン」の拡大って現象だ。日本では35年+支払い傾斜ローン解禁だったし、アメリカではinterest-only*1の急拡大だ。どちらもローンを組んでからかなりの長期間にわたって元金をほとんど支払わないのが特徴だ。

住宅ローンってのは、通常、元金を返済する前提で組まれるものだった。
元金が減っていれば、住宅の担保価値の変動が元金の減少幅に収まっている限り、たとえ借り手が返済を停止しても損失は発生しない。
つまり、a.「借り手の返済能力の欠如」とb.「元金の減少幅を上回る不動産価値の減少」がかさなった場合にだけ損失がでる。

ローンの返し方は古典的には二通りあった。元金均等払いと元利均等払いである。

年利5%で100万円借りて10年間元金均等払いで返す場合、最初の年には元金が100万円なので、利子は5万円。元金の1/10の10万円を足して合計15万円支払う。翌年は元金90万円、金利4万5千円....と返済額が減っていって、最後の年は10万5千円払って完済である。
実際の住宅ローンのような月単位の返済だと、最初の月に12500円、翌月12465円....と払っていって最後は8402円とかになって完済となる。
ちなみに利息総額は25万円ほどである。

そうすると、最初の年15万円の支払い能力がないと借りられない事になる。
それはちょっと厳しすぎるんじゃないかって事で、返済能力を重視して元金と金利を均等に支払う方法を考えたのが元利均等払い。
同じように元金と金利を毎月払っていくのだけど、毎月10607円づつ返済していく。初回は元金6460円、金利4147円。次の月は元金6467円、金利4140円....とだんだん金利の割合が減って、元金の割合が増えていく。この場合の利息総額は27万円ほど。

さて、日本でまず起きたのは返済期間の長期化である。5%100万円を35年の元利均等払いにしたときの初回支払いは月額5047円だが、そのうち元金は880円、利息は4167円。一年目終了時の残高はだいたい99万円。二年目終了時98万円、三年目終了時97万円。つまりほとんど元金の返済は進まない。木造家屋の場合、15年くらいで建物の価値はほとんどなくなるが、その時期を迎えても残額は76万円ほど、元金の3/4残ってる。つまり日本の一戸建てで35年ローンだと住宅購入費用のほとんどを地価が占めるか、地価が上がり続けない限り担保でカバーできない時期が来て当然だったわけだ。ちなみに利払いは総額で112万円で元金より大きくなる。

それでも地価が上がり続けてたから、家は欲しいがローンが払えないという人向けに出てきたのがゆとり返済とか言う傾斜返済ローン。
35年ローンのうち最初の10年間はほぼ利子だけをはらい、元金の返済を後回しにする事によって当初の返済額を抑制するものだ。最初は利子だけで元金は出世払いってことなので出世しなければ払いきれない。考え方を変えれば、最初の10年間は銀行から家を借り、家賃を払って、10年目から25年ローンで借りてた家を買い取る契約をするようなものだ。利払い総額はさらにふえて、だいたい125万円ほどになる。

アメリカでは割り切って10年間利子のみ、そのあと元利均等払いって明記されてて、それがinterest-onlyってことなんだけど、日本の銀行のゆとり返済とだいたい仕組みは一緒だ。

地価や不動産価格が上がり続けるものならば、先に不動産を取得してしまうというのはよい選択肢かも知れない。だから、10年早く25年ローンを組む事には一定の意味がある。いわば10年後まで不動産価格が値上がりする事にかける商品先物のようなもんである。が、予測が外れれば担保価値はなくなる。

日本でもアメリカでも、住宅購入希望者に対して新たな信用供与手法が与えられる事によって、不動産取得の需要が一時的に高まり、不動産価格が急上昇する。不動産価格の上昇に対応して、新たな信用供与の手法ができる、さらに不動産価格が上がる...ときて、ついにinterest-onlyの壁に突き当たると、それ以上不動産担保で信用創造して需要者を増やす事ができなくなり、不動産価格の上昇は鈍化する。

不動産価格が上がり続けなければ、貸付残高に占める担保のカバー率は下がり、残高と金利に対して信用が不足する。そして、不動産バブルがはじける、って流れのような気がする。

アメリカでは収入に対する住居費の比率が低かった事と住居の耐用年数が長かったために壁に突き当たるまでの時間が長かっただけという気もする。

不動産バブルが崩壊した後の日本でも、その気になればinterest-onlyの住宅ローンは組めるのだった。


追記:
どうしていわゆるバブル崩壊まで住宅地価は上がり続けたのかを考えてみたけど、やっぱり不動産を所有しようという動機すらなかった人たちに動機付けした上で機会を与えたって事なんじゃないかと。

機会を与えれば不動産市場の需要側がどんどん膨らむけど、供給は緩慢にしかふえない。で、機会を拡大するごとにドカンドカンと住宅地価が上がる。

機会の拡大というのにも限界があって、interest-onlyすなわち「実質的には銀行から不動産を借りている状態」ってのが音速の壁みたいに立ちはだかるんじゃないかとちょっと思ったわけだ。