よくわからん

規制によって消費者も事業者も損をするって事例によく出てくるのは大店法で小売店を保護する例なんだけど、実例を見る限りよくわからん。
 まず、その大規模小売店鋪での取引と周辺の小売店での取引だけ見てていいんだろうか?大店法の緩和で雨後の筍のように出てきたセルバンテスの小説にちなんだ名前のディスカウントショップがある。近所にあって、大店法が緩和されない限り出店できなかっただろうと思えるのはそこだけだ。
 確かに近隣の小売店は衰退傾向だけど、その店との競合が原因じゃないように見える。その大規模小売店鋪の駐車場には地元ナンバーの車が半分くらいしか居ないし、あまり見かけない羽の生えた車が多い。歩いてその店に入る人はあんまり居ないし、近所に住んでる人でそこに行く人はあまりいない。つまりあまり競合していない。
 じゃなんで周辺の小売店が衰退するのかっていうと、その店ができて、片側二車線の道路のうち一車線が駐車所待ちに。反対方向のうち一車線が駐車場があくまでUターン待ちする車で止まっている。*1混雑するし、事故も多くなるのでみんな迂回するようになる。知り合いなぞ自分の車を整備に出すディーラーの支店も変えちゃった。
 結局、大規模店舗によって、道路の交通容量と安全性そのものが落ち込んだのが周辺商業の落ち込みの原因としか思えないのだった。
 セルバンテスチェーンの方はおいといて、全うな大規模店舗を考えると、出店で悪影響を受けるのは足元の小売店ではない。むしろ店舗の誘致圏の外縁近くにあるような地域で、近所で一通りの買い物ができないような所の小売店だ。その店に立ち寄っても買い物は完了しないけど、スーパーに行けば何とかなる。だから、地元の店は素通りする。
 足元の小売店もそのままじゃ一定の売り上げ減はあるだろうが、うまく立ち回れば大規模店舗目指して遠くからくる人をキャッチして売り上げはむしろ増える。
 でまあ、大反対した商店街が栄えて、ヒアリングの対象にもなってない遠くのとうふ屋が潰れるわけだから大店法の意味はないように見えるわけだ。
 で、大規模店舗の集積が地域の交通需要を大きく変えるから自治体は結構対応が大変だ。交通集中対応の道路整備で税収増は飛んでく。
 でもさ、それで建物がやや古くなってきた20年目の借家更新期限を迎えてみると、営業を継続する大規模店舗はそれほど多くない。本社のぐあいがよければいいけど、本社の具合が悪ければ黒字でも閉店する。(古い店をたたんで、新しい店を出した方が儲かるのは、大規模小売店鋪のチェーンでは普通に信じられている。)貸家側としては、ペイするかどうかの境目で博打に負けるわけだ。
 他のチェーン店が同じ建物を使ってくれる可能性は低い。それぞれの流通チェーンは微妙にニッチが違うから、同じ床面積の店舗はうまく使えない。人の流れも不安定になり、建物の取り壊しの一年間の間に足元の小売店が一斉に潰れていく。足元小売店の共有の駐車場にしようなんて話も出るが、すでに商店街は駐車場だらけだ。次の借り主が見つかる頃には売り上げが伸びて得をする人はぐっと減り、歩いて買い物できてた人は車を買って別の地域で買い物をする癖がついている。
 で、大規模小売店鋪のライフサイクルで見る限り、「20年に一度近くで買い物できない2年間」「車買わなきゃ」「20年でいらなくなる道路」とかそういうコストが店で取引される商品の他にゴマンと出てくる。結局地域の消費者は高い買い物してるようにしか見えないんだけどなぁ。
 経済全体の中で商品取引のみによる利得ってそんなにでかいんだろうか?

*1:大店法って本来こういう事態を防ぐための法律です。