理科の応用力を持たないひと

小学校の理科を応用する力がなくなっているという論が新聞紙上を席巻している。
http://www.asahi.com/paper/column20071206.html

経済協力開発機構OECD)の国際学力テストの結果、日本は科学と数学の応用力、読解力のすべてで3年前より順位を下げた。57の国と地域が参加したが、先頭集団からは差をつけられてしまった

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20071205ur05.htm

日本は、すでに2位から6位に転落したことが明らかになっている「科学的応用力」に加え、「数学的応用力」が6位から10位へ、「読解力」も14位から15位へと全分野で順位を下げた。

順位が下がった→能力が落ちた
という論理らしいのだが、だとしたら、相対評価なのだろう。相対評価絶対評価の違いが書き分けられている新聞がない所を見ると、我が国では相対的に高い収入を得られる職業に就くのに「科学的応用力」も「数学的応用力」も不要であり、つまり、数学や理科なんぞ小学校レベルの事ができなくてアホを垂れ流した文章を書いても人並み以上の報酬が支払われて生活には困らないと証明しているようなもんだと思う。

順位はOECD各国の教育競争の結果である。したがって、各国が競争に勝つためにどの程度努力して、どの程度の結果が出たのかを見なければ解釈できないだろう。これを書いている新聞人たちは、OECD加盟国が、どの程度教育に力を入れているか知ってるのか?
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/toukei/05071201/001.htm
↑あたりを見ればわかることだけれど、
 2002年に日本の教師一人当たり児童生徒数はOECD加盟国の中で最低ランクだった。少子化で多少マシになってるけど。最低ランクの努力で最高クラスから中位クラスに転落したのなら、まあ良くやってるんじゃないか?
 競争に本気で参加してる国が上位から転落したら問題だけど、OECD加盟国の中では日本は本気で教育に力を入れてる国ではないのだ。

もちろん、教員の資質とかに関わる問題もあるよ。今の教員の中心の世代は共通一次世代からセンター試験世代に移った。校長や教頭などの管理職を除いた学級担任クラスでは、もっと若いだろう。この若い世代では教員になるまでに小学校、中学校、高校の幅広い知識と応用力なんてものでセレクションがかかっていないのだ。理科の教員になるのに理科が一科目できればいい。応用力も問わない。理系に得意科目が一つあれば、大学に入れた。大学の教養部はほぼ解体され、専門科目の基礎と語学中心の大学も多い。そういう問題は確かにある。理系出身で中学校の先生になって、学習指導要領の生物のところがまったくわかんない、お経みたいだ、と苦労してる先生も居たりする。でも苦労して一生懸命やってるよ。

そもそも理科の応用や数学の応用をする能力がなくても、給料には関係ないのだもの。どうでもいいよね*1

*1:職場では上の方の人たちほど、理系の基礎力すらない人の率が上がる。むしろ、給料と逆相関なんじゃないだろうか。どうして質量保存の法則とか、エネルギー保存の法則とか、熱力学の第二法則とかを疑って、いちいち根拠の説明を要求するのか不明である。かなり疲れてふてている。なんとかしてほしいんだけどね。