建設業界の事

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080327/151329/
↑談合消滅後の建設業界で何が起きているか (ニュースを斬る):NBonline(日経ビジネス オンライン)

が身の回りで人気沸騰中。

http://d.hatena.ne.jp/ryozo18/20080328/1206717622
ようは建設業は「社会福祉」的側面があったってことだと思う

「談合」がなくなって建設価格が「適正」になったことで、いままで企業なり政府が支払っていた「社会福祉的再配分」、つまり「割高な建設費」は別の分野に向かうことになる。
理想だけを言えば、建設業からあぶれた労働者が移動出来るだけの雇用をこの「あまったお金」が別の産業で生み出してくれることだ(例えば介護とか)。ただ実際は確実に同じだけの雇用を生み出すとも思えない。
そしてこのお金が向かうべきもう一つの行き先は、これらの競争力を失ってしまった「職人」に対してより直接的に支払われるべきである「生活保護」だ。この視点を持っておかないと、この建設業界の価格崩壊によって生じるある種の社会福祉の破綻に対処できなくなる可能性がある。もし対処できなかった場合の悲惨さはすさまじいものになりかねない。
われわれの社会はきちんと「生活保護」を支給するだけの原資が用意できるだろうか。浮いた公共事業費とかを変な方向に使ったりしないだろうか。きちんと社会福祉に回っていくだろうか。

適正(フェア)なのかな?ということに懐疑的。
マンションの大規模修繕のときに、相見積もりをとった。
あるゼネコンが出して来た見積もりのペンキ塗り作業、職人一人日あたり12,000円材料費諸経費込み。
足場代は別だがペンキ代、職人の給料、職人に目を光らせる親方の給料、高所作業の安全管理する現場代理人とその部下の給料、リスク管理する監督の給料、リスクを引き受けるゼネコンフィー全部こん中に入ってるはず。
 当然失格にしたよ。あきらかなダンピングだもの。*1
全体がこの調子で、あちこちで手を抜かなければ絶対に利益どころか経費も出ない。通常のゼネコンフィー20%が0になってるのなら利益度外視って事で納得もするけどね。

 複雑な工程を指定すればするほど手は抜きやすくなる。仕様で「ケレン+プライマー+3回塗り指定」の場所がどう作業されるのか、考えたら怖いでしょ。手抜きは職人個人レベルでもできるし適切な日当の出てない親方は適切な日当の出てない職人の手抜きを止められない。

 自分で内装工事する時に、仕事にあぶれた親方を1日50,000円でやとっちゃった(彼は親方として引き受けたので、職人も一人つれて来た。)事があるけど、彼を通して部材を買う事でちっとは益がでたかもしれない。もっと叩けただろうけど、叩いたらフェアじゃない。職人にアンフェアな事をすると、しっぺ返しを食らっても文句なんか言えないだろう。

 昔の役所は、ダンピングゾーン決めてて、ダンピングだったら失格にしてたから、あまり心配してなかったけど。この10年は、ダンピングだろうとなんだろうと役所は一番安いところに出すから、外国人単純労働者つかってガサ入れ食らって工事停止とか、コンクリ仕入れる金がなくて橋の橋脚の中が空洞とかいっぱい見つかってるんだが。

 談合の恐ろしい所は、談合で高価格を維持されちゃうとダンピングゾーンがわからない事。ダンピングゾーンを定めずに最安値で発注する怖さは、それを役所がやるとその価格がすぐに市場に反映されて価格情報が流通して、やっぱりダンピングゾーンがわからなくなる事。
 発注者が適正な価格で発注してない状況を作ったのは談合かも知れないけれど、ダンピングが蔓延してるわけは発注者の能力の低下があるかもしれない。


http://www.nurs.or.jp/~ogochan/essay/archives/1164

経済環境が厳しいらしいこと、特にそれが「発注者の強さ」に起因するらしいことは、言われるまでもなくわかったこと。そういったネガティブなことに関して言えば、既にIT業界にも起きているらしく、重層下請け構造による不幸の話はよく聞くところ。ヒエラルキーの下になればなる程回って来る金がショボく、現場で働いている者に一番分け前が少なく、伝票を右から左にしてる奴等が一番持って行く。まぁどこの世界でもあることのようだ。

 強い発注者が自分でリスクをとって安値発注するんならいいんだけど、今は発注者が保護されすぎてて弱いくせに叩くんだよね。
 発注者には発注の責任がある。だから適正な価格で発注しなくちゃいけない。昔なら最低時給切ってる人に高所作業させるような見積もり通してたら、労災事故に施主も連座だった。そういえばダイエーは超安値で塗装工事を発注する事で有名だったけど、メーカーの不良在庫のペンキを自ら買い付けて供給するとか、そういう形で自分でリスクをとって価格を抑えていた気がする。本来は右から左に回す時に利益とリスクをとるのが仕事だから「うまくいけば儲かる」って話のはずなのにねぇ。

http://d.hatena.ne.jp/arn/20080329#p2

バブル期に大量の需要が発生したため、建設業界で働く人が多くなりその関係のスキルに比較優位を持ってしまっている状況が発生した。その後、大不況が訪れそのまま状況が改善しない状況が続けばどうなるか。建設業界に対する需要は減りパイは小さくなっているのに、個人としては建設業界でのスキルに優位性があるため辞めるに辞められないし、不況であるが故に転職機会も限られている。結局、賃金水準は落ちていく。

そういうプロセスなんかなー......
少なくともバブル後半には発注者の能力がとても落ちていた。
バブル崩壊後5年くらいでまだ財政出動がいっぱいあった頃、スキルのある職人は仕事ないのに、「職人を雇うはずの見積もり」で借金背負わされてタコ部屋に居る人とか、日本語話せない人で軽作業だと思ってきたとか、そういう人が大量に現場に投入されてた。
それからダンピングが始まるわけだけど、手抜きは前提みたいになっちゃってる気がするなぁ。

*1:マンション内の財政改革派ににらまれる羽目にもなった。