「国土の均衡ある発展」ねえ

多分わたしは「国土の均衡ある発展」論者なんだろうな。
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080521#p2

 都心回帰の経済学―集積の利益の実証分析

八田達夫 (編)日本経済新聞社

本書は、編者の長年の主張といえる都市再開発の目玉である容積率緩和と、共著者のひとりである増田悦佐氏が『高度経済成長は復活する』などで主張していた「国土の均衡ある発展」イデオロギー批判がドッキングし、力強い変奏曲を生み出している。このふたつの核になる主張をフォローする実証系の諸論文も通勤のコスト計算や都市の集積効果を分析したものなど興味深いものが多い。

 東京・大阪湾岸沿いでの大規模工場の建設を禁じる1950年代末〜60年代初めの工業等制限法が大都市の衰退の元凶であった。東京圏は法人サービス業の拡大で、この規制による製造業の激減を乗り切ることができた。東京がもともと本社機能の集積効果が大きかったという歴史的経緯もこの法人サービス業への転換をスムーズなものにしたという。しかし大阪はこの転換ができずに長期低落の途を歩んでしまった。

ご本人の主張は↓あたりに近いのだろうか。
http://www1k.mesh.ne.jp/toshikei/170.htm

 明治末から製造業の立地過剰で環境の劣化が激しく高額所得者が一斉に逃散した大阪にもっと工業を集中しろですか?
不衛生で不健康な環境に労働者をたくさん詰め込めば発展したという話かなぁ。
 工場立地を制限しないで東京にサービス業が発達したかどうかはあやしいもんだな。

 中曽根政権以降は根拠なく「規制緩和」してきてるけど、関東大震災と戦災を経験して容積率規制が厳しくなったのも容積の増大はインフラ整備の水準によるって事で規制されてるだけで、インフラ整備して経営がなりたつほど地価が安くないんだったらどうしようもないよねぇ。*1東京23区が1990年くらいまで高密度に勤労者が居住できる最低限の条件の一つの下水道の普及にすら苦労してたとかとどう整合性がとれるんだ?

 高密度の都市内で労働力を効率的に動かすための高速交通に投資するどころか廃止*2してるよね。ロードプライシングすれば自動車で行けるというのはなんか違う気がするね。

 東京圏は必要な労働力を再生産した事ない*3と思うけど労働力の再生産はどうするつもりなんだろう。

  八田先生の主張は、ある程度わかるけど、インフラ整備のタイムスパンと規制緩和のタイムスパンはあってないんじゃないかな。
 アンチ均衡論者の人は均衡とか安定とか大嫌いだろうから、ぱあっと生産性が上がって落ちるのが好きなのかも知れない。

 私の言う均衡っていうのは、「暴動や反乱や政治的不安定を求めなくてはいけないような激変がない事」であって変化がない事ではない。ある程度自由な市場*4が安定して存在できて、それに従って人が動ける状態が望ましい。
 人の社会的移動と言う市場が安定して存在できる事が「均衡ある発展」なんじゃないかなぁ。

 農村部の人口がある程度減少する事は別に否定しないし。都市が高密度化していくためにインフラ整備していくならやればいい。

 実際には、東京都は輸送力の増強もロードプライシングもやらずに容積率緩和を断行している。容積率緩和派一般は「輸送力が不足してるのにバカスカ容積率上げて超高層建てまくって電車が混んで地価が上がりサービス業がついて来れなくて昼飯食う所もないけどそれで苦しむのは俺じゃないから金を出して投資するのは嫌」という人が多くて好きになれないな。

*1:あ、個人的には震災復興の集中インフラ投資が東京の強みになったと思ってます。

*2:都電とかね

*3:子連れ労働者のコドモの面倒を見ているだけ

*4:広い意味での