大阪府の破綻って、誰が破綻するの?

大阪府団交決裂 知事「削減は府民の声」
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80622a.htm?from=tokusyu

 大阪府の総額345億円の人件費削減案を巡り、20日から21日にかけて徹夜で行われた団体交渉。橋下徹知事と二つの職員組合との主張は平行線のまま決裂し、論戦の舞台は7月1日開会の府議会に移ることになった。
 府労連との交渉で、橋下知事が「組合の主張は自分たちの生活のことばかり」と指摘すると、新居晴幸委員長が「当然だ。人件費削減に反対する交渉の場だ」と声を荒らげた。背後にいた組合幹部から「ふざけるな」とヤジが飛ぶと、橋下知事が「そういう言い方はいいのか」とやり返した。

あんまりコメント欄を汚すのもなんですねぇって事で。

 法人(出資者+経営者)対従業員の交渉の場があるのは、あくまで法人と従業員のメリットが対立するのが前提だと思うのだが....府民の声ねぇ......府民の意思なんて「びた一文払いたくない」なんじゃないの?それをなんとか調整するために団交してるんじゃないだろうか。。
もちろん、経営破綻したら従業員にもデメリットがあるだろうから、経営安定のための不利益な措置なら同意の可能性はある。*1

 大阪府の場合、雇用打ち切りや将来の給与の減額ならできる可能性は高い*2だろうけど、過去勤務債務(退職金)の減額って、「過去の雇用契約のデフォルト」ですからね。知事は組合に債務免除を求めてるわけですよ。
 こんなの呑んで帰ったら、組合員が脱退しまくって、団交できなくなりますね。仮に議会を条例案が通っても、訴訟を避けるためには組合じゃなく、知事が個別の職員の同意をとらなきゃいけなくなりそうです*3。勝ち目あるんだろうか?
 訴訟合戦なんかになったら過去数年のサービス残業の支払いとかもいっぱいいっぱい出てくるでしょうねぇ。府民は得するんだろうか?

 府民を代表して債権者に「破綻しそうだから債務免除して」って言いにいって「その物言いはなんだ!」と威張ってるのはとても変でしょ。大阪府の破綻って、府民と知事が破綻するんだよ。破綻の責任が乱脈経営にあるというなら、経営責任ってものがあるだろうけど、経営責任を負うのは「選挙で選ばれた知事」と「投票権をもつ府民」でしょうが。
 民主主義なんだから。
 職員は府民の利益を念頭に置いて仕事する義務があるだろうけど、代わりに責任を負ったりはできないですよ。

「民間ではあり得ない」式検討も加えておくと、
 民間の法人が破綻するおそれが十分あるなら、債権者は自分の好きな時に破産を申請できる。減資するしないとか、得になる選択肢を選ぶ主導権がなくなるから、経営者は本当に破綻が見えるまで「破綻する」なんて「言っちゃいけない」。
 債券の発行に支障もないし、バランスシート上おかしくもない民間企業が、「社債の発行が株主の理解を得られないから」なんて理由で「破綻しそうだから金利減免して」って銀行に言いにいったら、「んじゃ今なら取りたてられるのね、うちが申告するから破産して下さい」って言われても当然だよ。*4

 株主の意見は尊重されるべきだと思うけど、あからさまに変なのは普通取り合ってもらえない。というか、とりあえない。
 債券の発行が嫌だというだけの理由で「すでに破綻」を府民が承認して知事が選ばれて債務免除を求めて「破綻!破綻!」と連呼してるのはもともと相当に変なので。債務免除を求められた人に「ふざけるな」って言われてもしょうがないと思うな。
 労組側も「法律に抵触するかどうかな要求をされてる」のに、「生活がかかってる」とか、とんちんかんな主張してるんだろうけどね。

 今は私も「大阪府はすでに破綻してるなぁ」とおもってる*5けど。

法に抵触する条例となる疑義があるとなると、条例が可決されても無効になるかもしれなくてややこしいが、この件人事委員会はなんて言うんだろうね?

*1:大阪府のバランスシートは賃下げで如実に経営が安定化するほど不安定ではないですねぇ。府民の財産はふえますが。

*2:それでも雇用保険に加入しないほど特殊な雇用契約なわけだから、難しい

*3:追記:参照 http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/roushi/20040116a.html

*4:民事再生の場合に保証される株主の権利の例ね。→ http://www.credia.co.jp/kabunushi.html

*5:会計上の理由でなく