念のため書いとくけど、風邪薬は眠くなるみたいだよ

まだ身の回りやマスコミに、G7財務大臣会見問題を「酒の問題」に帰着させようとする人がたくさん居るようだ。個人的には会見問題は、第一に財務省/外務省の問題であって、薬や酒や緊張感の問題ではないと思っている*1

で、会見問題は諸賢に対策を考えてもらうとして、私にとっての大問題は「風邪薬の効果を甘く見ている人がたくさんいる」事の方だ。なんせ私は自動車通勤で、毎日運転していて、この季節、花粉症対策も含めて眠くなる薬を服用する人はたくさんいる。

一応薬についてのあれこれも書く。
専門家として書くのでないので、正しくない記述もあるかもしれない。医学や薬学に関わる文章を書くのは難しい。
こんなブログは信用せず、かかりつけ薬局のある人は機会を捉えてきちんと風邪薬についての注意を受けて欲しい。このブログはそのための動機付けと考えて欲しい。

 今回の件で私が理解したのは、国政の担当者や、住民の健康に責任を持つはずの都道府県知事を含む、かなり多くの割合の人が市販薬の箱書きや注意書きを全く読まないか信じていなくて、風邪薬を処方されたときの薬剤師の説明を聞いてないか信じてないかのいずれかだという事だ。

 近所のかかりつけ薬局の薬剤師さんの説明を聞き、処方薬/民間薬の注意書きを読んだ記憶をおまとめ、ちっとwikipediaを活用して得られる第一世代抗ヒスタミン剤の特徴をまとめる。

第一世代抗ヒスタミン剤は、

  • アレルギー症状を抑える目的でも使われる事の多い薬。
  • 脳血流関門を超えて中枢神経にも強く作用する薬。
  • 第一世代と呼ばれるのは中枢神経への作用を抑える改良を加えた抗ヒスタミン剤が出て来たから。
  • 中枢神経作用に注目して、鎮静剤、抗不安剤睡眠導入剤(いわゆる睡眠薬)としても使われる事がある。
  • 有効成分に入っている市販薬や、調剤時の注意書きにはたいてい「強い抗しがたい眠気をもよおす」「車の運転や機械の操作はするな」と書いてある。
  • 非常に普及していて、この季節に売れ行き好調な「鼻炎カプセル」などの市販薬にはたいてい入っている。*2
  • 鼻炎症状がある場合、処方薬のセットにも含まれる事が多いが、最近では朝用には第二世代、夜用には第一世代のような使い分けがされたりする。
  • 作用のありかたには個人差がある。

以前のエントリに紹介した論文は、酒、第一世代抗ヒスタミン剤プラセボを飲ませた人たちにドライブシミュレータを操作させて、危険な運転が発生するか、眠気を感じるか、などを比較したもの。対照となった酒の量はは血中濃度0.1%相当だから、だいたいウィスキーのシングル3、4杯相当ってとこだろう。
 結果として、眠気や集中力の欠如に関しては第一世代抗ヒスタミン剤の効果は酒を上回ることも十分にありうる、まさるとも劣らない、という結論が提示されている。

私は自動車通勤者なので、世代を問わず抗ヒスタミン剤が処方された場合、道路交通法に鑑みて服用時の運転は避けるべきという考えのもと、朝食後は抗ヒスタミン剤以外の製剤を服用し、出勤してすぐに抗ヒスタミン剤を服用する。抗ヒスタミン剤の服用時点から半減期+αが経過するまで運転しない、という対応を薬剤師と相談して決めている。
 そうでなければ万が一の事故の時に主張すべき主張の根拠が薄弱になるからだ。

薬は効くから薬なのだ。抗ヒスタミン剤は抗アレルギー作用と同時に催眠作用もあるのだ。
そして、その力はアルコールと相乗効果を持つと言われている。

是否とも、今マスコミが流布している「風邪薬の効果」をバカにし、意思の力で克服しうるという非科学的な仮説にくみするような態度でなく、風邪薬においても各人において薬局の薬剤師に相談し、処方薬についても薬剤師の注意に耳を傾けてくれるよう、願いたい。

かかりつけ薬局や市販薬販売における薬剤師の配置の義務化はそのためのサービスなのだから、利用すべきだろう。

運転を日課とする人間としてこれだけは主張しておきたい。

*1:そう考えないと再発防止につながりにくくて、あまりに救いがない。

*2:同時にカフェインなど拮抗的な成分も入っている可能性がある