「うだつがあがらない」という事

大阪の放火事件で、「スプリンクラーがあれば」といった意見が報道で提示されていた事についての増田氏の意見を見た。

パチンコ店放火殺人事件の報道を見て思ったこと
http://anond.hatelabo.jp/20090707071946

一昨日パチンコ屋でガソリンを使った放火殺人事件があり、各メディアはきちんと、

「この規模の店舗にはスプリンクラーの設置義務はなかった」

と書いてはいる。しかし、

「接客業の責任として、負担はあろうが設置するべきではなかったか」とか、

「法律を変えて設置させる方向にしたほうがいいのではないか」

とか言っているとこがある。

言いたいことは解るし、一般市民の都合に合わせて法律を作れという意図自体は反対しないけど、

中小零細の店舗にまで、今は義務ではない事柄を義務化させよ

という意見は、イデオロギー的にヤバイのではないだろうか?という気がした。

 必要と一般的に考えられているような防火設備で、義務ではないものを備えていない事を昔風に言えば

うだつがあがらない

ということですね。*1
 資金が不足だったり、いろんな事情でうだつがあがらない事は、まわりがとやかく言っても仕方がない。いつかビッグになったら上げてね、って感じだったんだろうか。
 もちろん、間口を構える以上、一人前だし、義務も果たしていたと思う。でも、うだつが上がらないのに偉そうにしてたり、二軒目を構えたりとかは本気で軽蔑されたんだろうね。

 スプリンクラーは現代の「うだつ」という事で、他に「うだつ」的なものって何があるかっていうと、ビルのまわりには結構たくさんそういう施設がある。

  • ビルに用事がある車が道路にはみ出して迷惑をかけないように設ける車回し
  • 万が一の落下物がビルに出入りする人を傷つけないための「ひさし」
  • 万が一の落下物の飛散をふせぐ壁際の植栽

 羽振りの良い会社のビルというのは、こういうものを備えていて、うだつの上がらない会社のビルとははっきりと違っていたと思うのだ。

 バブルの頃からそういう形をもった「うだつ」の仲間は見られなくなってきたけどね。

 逆に増えてきたのが、スプリンクラー設置義務を回避するために、法的には二つのビルがあるように分割する*2とか、そういう脱法的な手法かな。



......なんて考えてたら、今朝はこんなニュースが.....

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090707-OYT1T00936.htm

(引用者略)屋上からガラス落下、女性軽傷
7日午後1時50分頃、(引用者略)(地上21階建て)の高さ103メートルの屋上から、空調設備などを囲っていたガラス張りの外壁の一部が、同ビル東側の路上に落下した。

私が子供の頃は、はぶりのいい企業のビルなら、歩行者がいるところに「間違っても」落下物がないようになっていた気がする。
「法規制されてないから、飛散防止のスペースを取らなかった」と言うなら、うだつがあがらなくなったんだね。

最近CSRなんてものがはやってる。
「うだつがあがらなくなった」=「社会的責任が果たせなくなった」企業が増えた。
だから言い訳がはやってるようにも見える。

追記:
いくつかの記事を見たら、ガラス落下事故では、ひさしにあたって歩行者への直撃は回避されているようだ。まったくうだつがあがらないような会社ではなさそうで、ちょっと安心した。

*1:念のため、「うだつ」は近世の都市の商業的な区域で、隣の店への延焼を防ぐために店の間口の左右に設けられる遮蔽板のような防火設備。義務ではないし、1軒おきにあっても効果は同じかもしれないけれど、これを設置する事が社会的責任と考えられていた。

*2:エキナカでは常套手段らしい