山林分収権証券と日本株、あるいは信頼できるstupid

 アメリカの投資家にとって日本株保有する意義ってなんだろう、と考えていた。*1

ここから書く話は、おもいつきであって、なんら根拠の確認を行っていないヨタ話、あるいは「お話にならない」話題かもしれません。

 山林分収権という金融商品がある。山林経営の収益を分配される受益権を売り渡して森林投資の資金を調達するものだ。日本では緑のオーナー制度として固定的に扱われているが、海外では証券化されて市場で流通する事もあるらしい。事業を証券化した金融商品としては利回りがかなり低い部類になるのだけれど、それなりに人気がある。
山林分収権の特徴として、

  • 景気が良くても悪くても産物の量は安定している。
  • 地上権の売り渡しであるので良く保護されており、発行主体の破産差し押さえなどがあっても収益が影響を受けない。
  • 林産物の価格は一般的には物価水準に連動する。インフレであれば額面上高収益、デフレが長期的に持続すれば元本割れの危険がある。

こういう証券を買っても、あまり儲からない。もうからないからそんなもんいらないかというと、そんな事もないのである。この証券の特徴から、「元本をすべて失うことにはなりにくい。」「インフレーションに連動した返還を得られる」「好況では利益の還元は少ないけれど、不況でも同じくらい」ということで、スタグフレーションのような事が起きた時に無茶苦茶強い商品になってる。

普通の国では資産を銀行に預けていれば、インフレーションで資産の価値はついた金利を超えて確実に下がっていく。ハイパーインフレがおきれば過去に稼いだキャッシュは紙くずになってしまう。だから資産家は成長する分野に投資をして資産を増殖させなければいけない。
でも、一カ所だけ確実に成長して収益を上げられそうな所に全ての資金をつぎ込んでしまうと、会社の倒産や軍事クーデターや指導者の思いつきでメチャメチャにされるかもしれない。だから、資産家はリスク要因が異なる複数の投資先にふりわけて投資する。
 山林分収権は、それだけではローリスクローリターンな投資にすぎないけれど、リスク要因が大きく他と異なる。スタグフレーションに対応できる投資には希少性がある。ポートフォリオの中で資金の一定部分を振り向けておけば、全てを失う危険性は下がる。大もうけできるかできないかという意味ではできない。けれど、ポートフォリオの中に一枚入れておくと他が全部ダメなときには、この資産だけは相対的に大きな利益を約束してくれる。保険みたいなもんですね。

で、アメリカの投資家は国内の成長性を期待できる株式とかも買うだろうけれど、BRICSとか、そういう成長を期待できる市場にも投資しなくちゃいけない。それだけでは通貨危機とか、ハイパーインフレとかでダメになっちゃう可能性が高い。

だけど、そんななかでリスク要因が他の国と全く違う国が一つある。

  • その国の中央銀行の政策はアメリカではstupidと呼ばれていて、景気がどう動こうと国家財政が傾こうと資金供給をガチガチに絞って物価を変動させない。だから世界景気が後退したら相対的に通貨高になってリスクがヘッジできる。
  • 成熟していて高成長も期待できないが、外貨依存体質だからアメリカの景気に連動した収益が期待できる。

というわけで、アメリカがインフレになった時には魅力的な要件を備えているわけです。
だからアメリカの投資家はインフレ懸念が高くなると、その国の株を買い、インフレ懸念がおさまるとその国の株を売ります。
アメリカのインフレ懸念が今どのくらいの強さかはFF金利として現れます。
 ひょっとして、これがFF金利日本株が連動する理由なんじゃないか?と思ってます。FRBは市場から信頼されていると言われますけれど、日本銀行も「やつらは絶対にstupidな政策をとる」という確固たる信頼を勝ち得てるのではないでしょうか。