「燃費グッズを最初に採用するのは自動車メーカー」の限界

「がんSTOP音頭」の細胞カラーチェッカーや摘発されたCCDキットのように、さまざまな癌が家庭でお手軽に診断できる技術は今の地球上にはない。もしそんな技術があるのなら、健康食品会社や怪しげなウェブサイト経由ではなく、普通の医療機関で検査を受けられるはずだ。「燃費向上グッズを最初に採用するのは自動車メーカー」と同じ論理で考えればよい。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20080718#p1

後段の「同じ論理」が正しいのならば、コンタクトZは電工メーカーで最初に実用化されてるなぁ。
もちろん、接点の電気的な伝導率を上げるためにグラファイト粉末を使うような事は実用化されてるんだろうけれど、粘土や樹脂とグラファイトを均質に練り上げて木質のホルダーに挟み、ホルダーごと削って使うような製品は近所の文具店にはあるが、電気屋さんにはあまり見かけない。

 じゃ、電工メーカーでそれを今から実用化するかというと、しないような気がする。
コンタクトZみたいなものは、それほど高度でないものにせよ、技能のある使い手を補助するもので、万人向けではない。一生懸命技術開発し、効果を安定させ、安全を確保できたとしても、現在あるコンタクトZより安くて良いものを供給しなければ、技能のある人は今あるコンタクトZを使うだろう。だから電工メーカーはコンタクトZには手を出せない。

有効な燃費グッズにしても、汎用性が高くてありふれてるものなら、商売にならない。

たとえば、「タイヤの空気圧を適正に保つ機構」は燃費と安全性に効果はあるのだけれど、車に乗る前に法律で定められた最低限のチェックをするのとさほど効果は変わらないので実用化されないし、新車を買った時についてくる「愛車セット」に空気圧計は入ってない。

 こんなの、まめな人にはそれなりの効果があり、ずぼらな人には効果がすごくあるのだけれど、人によって効果はまちまちで、「誰でも○%くらいの効果」なんて事はうたいにくい。自動空気圧調整機構のようなものの重量や仕組によっては効果を上回る負荷になる。

 実際にはプロフェッショナルであるはずのトラック運転手ですら、法定で定められた仕業点検なんてしない人もいる。溝のなくなったトラックなんて珍しくないでしょ。ずぼらな人だらけだ。
 もし愛車セットに空気圧計を入れて、ディーラーが啓蒙すれば、それなりの二酸化炭素排出量の削減と事故防止の役にたつだろうけれど、採用してない。
 確実に効果があるだろうと見込めるけど、空気圧計は特別なものではないし、空気圧の点検なんて教習所で実習する事だし、人によって効果があるだろうけど、それで儲かるという事にはなりそうもないかな、と思う。

 医療でも同じだ。
私の場合、健保がリハビリ訓練に使える限界を超えてリハビリをしている。点数0だから訓練はしてもらえないけれど、リハビリ医に通って、装具屋さんに健保の外で作ってもらった装具をホームセンターで手に入れた部材で自分で改造し、医師に点検してもらって、自主的にリハビリを継続している。そうしていないと痛くて気が狂いそうだったからだ。
 世の中一般にどうかはしらないが、訓練の継続は私にとって苦痛の緩和と腕の動きのために必要だし、自分で工夫しないとそれは実現できない。
 厚生労働省と医療業界、医学界といった全体は医療のプロ集団だけど、提供していないサービスはたくさんある。

「うまいものは全部レストランで食べられるはず」とか「役に立つものはすべて業界主流が採用している」とかいうこともないだろう。

 もちろん、「どんな人でも確実な効果が見込める」ような、グッズや手段のようなものがあるなら、自動車会社は採用するし、医療として提供されるだろう。
 「どんな人にでも効くような素晴らしいものをわざわざ独占して、高値で少数の人に売ることで儲けを少なくしています」とかいう商売がろくでもないものである事は間違いではないのだろうけど。