最低基準ってなんだと思ってるのだろうか?

finalvent氏のエントリ
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20081223/1229987646
を経由。

日経新聞社説
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081222AS1K2000522122008.html

保育所の認可基準は地方に任せよ(12/23)
 少子化対策の基本ともいえる保育所の改革が進まない。待機児童が今年は5年ぶりに増え、病児保育や休日保育など多様なニーズへの対応も不十分だ。地方分権改革推進委員会の勧告に続き、規制改革会議が今年も保育分野の改革の必要性を指摘した。硬直した制度を変えるには、まず地方が実情に合わせて機動的に対策を打てる体制が重要である。
 国は児童福祉法に基づく省令で、認可保育所について子ども1人当たりの面積や職員、保育時間などの最低基準を詳細に定めている。それを下回れば補助金を支給しない。

 細かくなんて決まってませんよ。
 決まっているのは「最低基準」です。最低基準すら満たさない施設は補助に値しないというだけの事です。

 例に挙がっている人員配置の基準は、「通常考えうる火災」の際に、預かる園児を避難させうる「最低の人数」で決まっている。非常時には腕に抱いて逃げるしかないし、乳児は一本の腕に一名までしか抱けないし、人間の腕は2本以下である事がほとんどだ。

 逆に、人員が原因で認可基準に達していない場合、火災の時に避難体制がとれず、一度避難した保育士がまだ歩けない子を一度で避難させる事ができず、燃える建物に引き返す事になります。

追記:
ミスリーディングな記述になっているので補遺。
 新生児の場合、保育士または看護士一名につき、3名の新生児を避難させられる事が基準の根拠だったと思う。両腕に一名づつ、用具を使って一名。当然、技能が要求される。ただし、経験豊富で訓練された保育士であっても首のすわっていない乳児を含む場合は実行困難であり、民間認可保育園などでは赤字覚悟で人員を確保している。*1
:追記終わり

 地方ごとに火災の際に園児の最高何%まで避難させて何%人的被害を発生させるか設計するんですね。そしてそれを国が補助するんですね。
 避難階段の幅とか、避難経路とか、「科学的根拠なしに決まってると根拠もなくおもってる」んですよね、こういうこという人たち。

 エンゼルプランにともなう規制緩和で営利目的の保育施設が許可(認可ではない)されたとき、民間営利保育施設を新聞各紙が褒めたたえていたのを思い出したよ。
 そこは、庭のない普通のビルの1フロアで、ぎっしりベビーベッドが並んでいた。コストの高い有資格の保育士*2のかわりに、保育業務をマニュアル化*3し、非熟練のアルバイトさんをやとってコストを抑えましたというのが自慢だった。アルバイトさんは非熟練労働者で、訓練はしてないけど、いざという時にコドモをだっこして逃げるための手の数は足りているから大丈夫でしょうという事で、とても効率的で清潔で安心だそうである。
 で、無認可のそんな施設にも多少の補助金が出てたように思う。

子どもの健全な発育のため床面積が広いに越したことはないが、待機児の多い都市部では、基準を満たす用地を確保できず保育所の新設をあきらめざるをえない場合もある。

はぁ?別に普通のビルの二階が賃貸で認可保育園になってるとか珍しくないよ。公園があって、そこまで園児を連れて行ける人員配置があればいい事になってるはず。

え、公園がないって?
じゃ、都市計画もろくにやらない上保育施設もろくにないわけ?その地方は?

「地方が実情に合わせて機動的に対策を打てる体制が重要である。」って、どこの地方も空き屋開きビル空き地だらけ*4だし、大量にクビを切って非正規雇用に切り替えたから、本当は保育に携わりたいが、保育の場を去らざるをえなかったひとも沢山いる。足りないのは「金」くらいで、その理由は主に「マイナスシーリング」だろ*5

 最低基準以上の人員配置や、施設の充実にも多少の援助をしますとか、そういう話なら夢があるんだけどな。

追記:
話としては「耐震偽装マンションのような低コスト建築」を建てたいから、建築基準は地方に任せるとか、そういう話なんだよね、これ。

*1:公立の場合は見て見ぬ振りをする事が多い。

*2:比較的高給取りと言われる公務員の保育士さんでも、もう倒産したその保育施設の運営会社の広報担当平社員よりずいぶん給料は安いのだが

*3:たとえば、「新生児のおむつを一時間に一度必ず交換する」。排便がなくても交換し、交換直後に排便した子が泣こうがわめこうが一時間は交換しない

*4:東京を含む

*5:追記:あるいは憲法上の義務である保育園が未整備でも、「市民の要望」で作らざるをえないハコモノか。